筆者も設計者になりたてのころは、加工しにくい(できない)設計、製造(組み立て)できないアセンブリ設計、コストを考えない設計、不注意による寸法(サイズ)漏れなど、さまざまな設計ミスを経験してきました。その当時は、設計ミスを起こした設計者自身が、工作機械による追加工を行う/調達部門と交渉する/組み立てを行うことが当たり前でした。また、設計者として配属される前には製造現場での実習も経験していました。
最近では、企画、設計開発、調達、生産、市場投入、営業、販売、保守に至る全てのプロセスを合理化しようとする動きによって、社内での分業化が行われる傾向があります。この分業化によって、設計者は“設計のみに集中”しやすくなるわけです。もちろん、調べる、打ち合わせする、帳票を作成するといった設計に関わる付帯業務への対応がなくなるわけではありませんが、少なくとも筆者が若手だった当時のように、設計者自身が工作機械で追加工を行うといったことはさすがに減ってきたのではないでしょうか。
設計開発の現場で取り組まれている標準化ですが、その目的として次のようなものが挙げられます。
しかし、標準化で作られるマニュアルは、「○○するには××すること」「××のサイズは○○にすること」「○○してはいけない」といった内容が目立ち、失敗経験をベースとした「べからず集」的な作りになることがよくあります。
もちろん、繰り返し同じ失敗をしないようにする対策は重要ですし、趣味で設計しているわけではありませんので、ある程度の制約やルールも必要ですが、禁止項目やパラメータばかりが羅列されたガチガチの標準化では、創造的な設計は成し遂げられません。仮に、厳格な標準化を作り上げたとしても、そのうちルールに適合しないケースが現れ、改定が間に合わず、いつしかその標準化が忘れ去られてしまう可能性もあり得ます。設計ツールのデジタル化によって進化した今、標準化の真の目的は何か次回あらためて考えてみることにしましょう。 (次回へ続く)
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