パナソニックが再生家電を売る理由、サーキュラーエコノミーだけが目的ではないサステナブル設計

パナソニックは、IoTの活用などにより家電販売の新たなマーケティング施策を進める「新たな商売の基準」の進捗状況とともに、同日から本格的に販売を開始するパナソニック検査済み再生品(1年保証付き)「Panasonic Factory Refresh」について説明した。

» 2024年04月11日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 パナソニックは2024年4月10日、東京都内で会見を開き、IoT(モノのインターネット)の活用などにより家電販売の新たなマーケティング施策を進める「新たな商売の基準」の進捗状況とともに、同日から本格的に販売を開始するパナソニック検査済み再生品(1年保証付き)「Panasonic Factory Refresh」について説明した。既に同社のオンライン販売サイトを通じて、ドラム式洗濯乾燥機や冷蔵庫、4K有機ELテレビ、デジタルカメラなどの販売を開始しており、価格はドラム式洗濯乾燥機と冷蔵庫で新品の約2割引きの設定となっている。

「Panasonic Factory Refresh」の対象となる10カテゴリーの商品 「Panasonic Factory Refresh」の対象となる10カテゴリーの商品[クリックで拡大]
パナソニックの宮地晋治氏 パナソニックの宮地晋治氏

 Panasonic Factory Refreshは、サブスクリプション型サービスの契約終了後商品や初期不良品、店頭展示の戻り品などを、パナソニックグループ監修の下で出荷基準を満たす再生を行った商品(リファービッシュ品)である。対象となるのは、「新たな商売の基準」の下で指定価格制度やサブスクリプション型サービスで扱われる高い付加価値を持った商品であり、リファービッシュ品と言っても一般的な中古家電とは位置付けが大きく異なっている。

 パナソニック 執行役員 コンシューマーマーケティングジャパン本部長(兼)くらしアプライアンス社 副社長 国内マーケティング担当でパナソニックマーケティングジャパン 代表取締役社長を務める宮地晋治氏は「パナソニックグループでは『Panasonic GREEN IMPACT』を掲げカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現を目指している。今回のPanasonic Factory Refreshは、2020年にスタートしたサブスクリプション型サービスに続くサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みであり、再生/再利用の循環スキームを強化するためのものだ」と語る。

「Panasonic Factory Refresh」の循環スキーム 「Panasonic Factory Refresh」の循環スキーム[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 これまでもパナソニックは、2023年12月からドラム式洗濯乾燥機と4K有機ELテレビで1年間の保証を適用したリファービッシュ品の販売を行っている。また、同年6月からヘアドライヤーの「ナノケア」で、2024年2月から卓上型食器洗い乾燥機でリファービッシュ品の定額利用サービスを提供している。今回のPanasonic Factory Refreshの発表に合わせて、1年間の保証を適用したリファービッシュ品として、ポータブルテレビ、Blu-rayディスクレコーダー、ミラーレス一眼カメラ、冷蔵庫を追加するとともに、2024年9月には電子レンジと炊飯器を加えて、合計10カテゴリーで事業を展開していく方針だ。

「感動を与える商品のファンを広げていくための施策にもなり得る」

 パナソニックが推進する「新たな商売の基準」では、適正価格販売に向けた指定価格制度やサブスクリプション型サービスなど、既存の販売網との関係性に変化が起こる施策も多い。今回、パナソニック自身が1年間の保証を付けてリファービッシュ品を販売するPanasonic Factory Refreshも、現時点で販路がオンライン販売サイトのみであることや、毎年新製品を市場投入しそれらを販売店が積極的に拡売することで売り上げを稼ぐ従来のビジネスモデルとバッティングすることは、既存の販売網に影響を与える可能性がある。

 宮地氏は「Panasonic Factory Refreshは、スタート時点では初期不良品やサブスクリプション型サービスからの戻り品など限られた台数なので大きな数にはならない。しかし、今後規模が拡大するのであれば販売網の協力が必須になるので、どのような仕組みが必要になるかは検討していきたい」と説明する。

 また、新商品の開発サイクルについても「例えば、指定価格制度の対象になっている卓上型食器洗い乾燥機は、マイナーチェンジによる新商品発売を毎年行わなくても3〜4年は同じモデルで問題なく販売できている。逆に、そういった新商品発売を行わないことで、1人用食器洗い乾燥機『SOLOTA』のような高い評価を得られる、感動を与える商品を開発するリソースを生み出すことができている。手のひらに収まるシェーバの『パームイン』も同様のことが言える。常に感動を与える商品を生み出すことが難しいマイナーチェンジによる新商品発売については見直していく必要があるかもしれない。Panasonic Factory Refreshは、感動を与える商品のファンを広げていくための施策にもなり得る」(宮地氏)という。

 Panasonic Factory Refreshはサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みでもある。宮地氏は「政府がサーキュラーエコノミーの実現を推進する中では、リファービッシュ品も地産地消が求められるようになる。現在は、ドラム式洗濯乾燥機と4K有機ELテレビは宇都宮工場(栃木県宇都宮市)、その他の商品はサービス工場で再生を行っているが、再生にかかるコストよりも物流コストの方が高い状況になっている。規模が大きくなるのであれば、政府が求めるように地域で小さく回す必要があるだろう。そのときには販売網や自治体との連携も必要になるし、コンソーシアムやスキーム作りなどが始まるのであれば積極的に参加していきたい」と述べている。

⇒その他の「サステナブル設計」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.