ダイハツとトヨタが今後の小型車開発の方針を発表品質不正問題

ダイハツ工業とトヨタ自動車は海外事業の体制見直しなど今後の方向性について発表した。2023年4月以降に明らかになった国内外の認証不正を受けて、トヨタ自動車が小型車の開発から認証まで責任を持ち、ダイハツが開発を担う体制に変更する。

» 2024年04月09日 06時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 ダイハツ工業とトヨタ自動車は2024年4月8日、海外事業の体制見直しなど今後の方向性について発表した。2023年4月以降に明らかになった国内外の認証不正を受けて、トヨタ自動車が小型車の開発から認証まで責任を持ち、ダイハツが開発を担う体制に変更する。両社がかかわる社内カンパニーの「新興国小型車カンパニー」は廃止する。

トヨタが小型車の開発や認証に責任を持つ

 一連の認証不正を受けて、海外で仕向け地や台数が拡大する小型車に対するダイハツのリソースや知見には限界があると判断。再発防止を徹底する観点からトヨタ自動車が小型車の開発や認証に責任を持つ体制とし、ダイハツはトヨタ自動車から受託して実際の開発を行う。ダイハツが小型車開発を担当する点はこれまでと変わらない。今後の切り替えモデルから順次この体制で開発するが、開発期間が従来より長くなることによる商品計画の変動については改めて公表するとしている。

 これに伴い、新興国向けの小型車に関してトヨタ自動車とダイハツの橋渡し役となっていた新興国小型車カンパニーを解消する。製品企画機能はトヨタ自動車のコンパクトカーカンパニーが担い、コンパクトカーカンパニーからダイハツへの委託とする。開発が次のステップに進んでいいかどうか、節目の管理や判断をトヨタ自動車が監督する。

これまでの体制(左)と、今後の体制(右)[クリックで拡大] 出所:ダイハツ

 トヨタブランドの事業/商品企画機能は、トヨタ自動車の事業・販売ビジネスユニットに移管する。リソースの管理や適正化など、委託に関わる部分もトヨタ自動車へのレポートラインに変更し、トヨタ自動車との連携を強化する。新興国小型車カンパニーに関わっていた海外法人であるトヨタ ダイハツ エンジニアリング アンド マニュファクチャリングとトヨタ モーター アジア パシフィックは、社名を変更して「トヨタモーターアジア」とし、アジア地域本社としてトヨタ自動車のアジア本部に所属する。

 ダイハツ 代表取締役社長の井上雅宏氏は「今後成長が見込まれる新興国市場の小型車は、トヨタ自動車とダイハツがそれぞれの強みと弱みを補完し、グループで協力して力を発揮していきたい。ユーザーの日常生活に寄り添った良品廉価なクルマづくりはダイハツの強みだ。これを磨き上げて、軽自動車を中心に据えたモビリティカンパニーを目指す。ダイハツ単独で自動車ビジネスを考えるのではなく、グループ各社とともに今後のグローバルな自動車ビジネスを考え、グループ内でのダイハツの役割を再定義していく」と説明した。

 新興国市場では、生活に必要とされる小型車を手頃な価格で提供し続けるとともに、電動化や知能化ではトヨタ自動車との連携を強化する。マルチパスウェイでのカーボンニュートラルの実現や、インフラと協調した効率的な人流や物流のラストワンマイルを支えるモビリティやサービスにも取り組む。

 ダイハツ 代表取締役副社長の星加宏昌氏は「小型車には、ダイハツが軽自動車の開発で得たノウハウを生かしてきた。これはダイハツの強みである。小型車や軽自動車に対してダイハツがトヨタグループでやるべき仕事は変わらない。強みを生かしてスモールカーの開発に尽力したい」と述べた。

 軽自動車については今後もダイハツの強みを生かし、軽EV(電気自動車)にも取り組むとしている。スズキやトヨタ自動車とともにプロジェクトが進んでいた軽商用EVについて、ダイハツ 代表取締役副社長の桑田正規氏は「軽商用EVの開発はいったんストップしているが、再発防止策をやりきることを前提に、開発再開を目指す」とコメントした。

3つの改革を推進

 再発防止に向けて、ダイハツは2024年2月9日に国土交通省に再発防止策を届け出た。(1)経営改革、(2)モノづくり/コトづくり改革、(3)風土改革の取り組みを通じてマネジメント層と現場のコミュニケーションを図り、適切な体制や仕組みの運用を徹底する。また、旧経営陣が2023年度の賞与を返納することも発表した。

 (1)経営改革に関しては、機能軸の縦割りを排除し、横の連携が取れるコミュニケーション重視の組織に再編する。統括部長や副統括部長の職を廃止することで、組織を社長→副社長→本部長にスリム化する。役割とミッションを明確にした上で若手プロジェクトリーダーも起用する。

 (2)モノづくり/コトづくり改革については、身の丈に応じた開発日程に見直すとともに、遅れが発生した場合に現場が異常を知らせる体制を整備する。遅れが発生した際に機能間でリソースを融通し合ったり、日程を見直したりしてあるべき仕事のやり方ができる体制を構築していく。

 (3)風土改革では、部門間のローテーションを活性化する。また、現場から管理職への書面レポートの廃止や、デジタルツールを積極的に活用した業務の効率化などにより、必要な仕事に時間と工数を使える環境を整える。無駄な仕事を省くためのトップダウンと、現場の困りごとやアイデアを吸い上げるボトムアップをバランスよく組み合わせる。

 この他、認証部門を車両開発本部から品質統括本部へ移管するとともに、人員を増強した。販売台数の回復など今後の見通しについて、社長の井上氏は「まずは1つ1つのモデルの適合性を国土交通省に確認してもらい、安全なクルマを届け、ユーザーに安心してもらいたい。現時点ではシェアを取り返すとか、販売台数の目標についていえる状況ではない」と説明した。

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