フィンランドが推進する医療と社会福祉のDX/SX戦略とイノベーション海外医療技術トレンド(105)(1/4 ページ)

本連載第32回、第45回、第51回、第57回、第90回、第100回で北欧全体のデータ駆動型デジタルヘルス施策を取り上げてきたが、今回はフィンランドの医療/社会福祉におけるDXやSXの動向に焦点を当てる。

» 2024年03月15日 07時00分 公開
[笹原英司MONOist]

 本連載第32回第45回第51回第57回第90回第100回で北欧全体のデータ駆動型デジタルヘルス施策を取り上げてきたが、今回はフィンランドの医療と社会福祉におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)やSX(サステナビリティトランスフォーメーション)の動向に焦点を当てる。

⇒連載「海外医療技術トレンド」バックナンバー

フィンランド政府が医療・社会福祉分野のDX戦略を公表

 本連載第70回で、フィンランド・イノベーション基金(SITRA)が調整役となり、2021年2月1日〜2023年7月31日の間、欧州保健データスペース(EHDS)のパイロット・プロジェクトとして実施された「欧州保健データスペースに向けた共同行動(TEHDAS)」(関連情報)を紹介した。その後TEHDASは、2024年2月2日、欧州委員会に、TEHDAS 2のプロジェクト提案書を提出したことを公表するなど(関連情報)、すでにEHDSの次ステップに向けた動きが本格化している。

 このような保健医療データの多国間連携拡大策と並行してフィンランド国内では、2023年12月1日、社会福祉・保健省が、「医療・社会福祉におけるデジタル化・情報管理戦略」(関連情報)を公表した。今回公表された戦略は、以下のような構成になっている。

  • 1.イントロダクション
    • 1.1 戦略準備のために設定した目標
    • 1.2 変化するオペレーショナル環境
    • 1.3 デジタル化戦略に対する国際的アプローチ
  • 2.戦略の準備
    • 2.1 準備プロセスの計画策定
    • 2.2 準備プロセスにおける参加者
    • 2.3 市民調査とその結果
  • 3.戦略目的
    • 3.1 ビジョン
    • 3.2 目標とその説明
    • 3.3 成功(成功要因)とその説明の前提条件
  • 4.戦略の実装
    • 4.1 戦略ロードマップ
    • 4.2 タスクの設定
      • 4.2.1 デジタルヘルス・社会サービスセンターと顧客・サービスのカウンセリング
      • 4.2.2 情報のデジタル化からデジタルオペレーティングモデルへ
      • 4.2.3 顧客自身のデータへのアクセスの付与
      • 4.2.4 サービスにおける顧客の参加
      • 4.2.5 デジタル・ウェルビーイング・オペレーティングモデルとサービスのタスク
      • 4.2.6 データ品質の保証
      • 4.2.7 相互運用性ポリシーとデータモデルの選択
      • 4.2.8 Kanta情報システムサービスの評価と更新
      • 4.2.9 Kantaデータのベネフィットの強化
      • 4.2.10 保健・社会サービスデータ2次利用の構築による全国および地域のサービスシステムの制御と管理
      • 4.2.11 研究・開発・イノベーション活動における情報の利用
      • 4.2.12 デジタル化と情報管理のための管理・制御モデルの構築
      • 4.2.13 デジタルセキュリティ
  • 5.戦略のモニタリングと維持
  • 参考文献

 まず本戦略では、「医療・社会福祉サービス向けのデジタル基盤を構築する」というビジョンの下に、以下の4つの目標を掲げている。

  1. 個人は、情報に基づく期待やデジタルサービスの支援を受けながら、自身のウェルビーイング、健康、機能的能力に、独立して注意を払うことができるようになる
  2. デジタルサービスを利用できる顧客にとって適切な時はいつでも、全てのウェルビーイングサービスカウンティの中でデジタルチャネルが第一選択肢となる
  3. 医療・社会福祉従業者のワークロードが、情報利用の向上と先進的な技術ソリューションの導入により、容易化されるようになる
  4. 上級管理職や意思決定者、研究者は、管理境界を越えて、サービスやベネフィットに蓄積されている情報に幅広くアクセスする

 その上で、図1のような戦略ロードマップを提示している。

図1 図1 医療・社会福祉におけるデジタル化・情報管理戦略のロードマップ[クリックで拡大] 出所:Ministry of Social Affairs and Health Strategy「Strategy for digitalisation and information management in healthcare and social welfare」(2023年12月1日)を基にヘルスケアクラウド研究会作成

 そして表1は、上記の戦略ロードマップで設定された13のタスクと責任主体、指標を整理したものである。

表1 表1 戦略ロードマップのタスクと責任主体、指標[クリックで拡大] 出所:Ministry of Social Affairs and Health Strategy「Strategy for digitalisation and information management in healthcare and social welfare」(2023年12月1日)を基にヘルスケアクラウド研究会作成
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