他方、前述の戦略ロードマップのうち、「11. 研究・開発・イノベーション活動における情報の利用」のタスクに関わるフィンランド固有の仕組みが、フィンランド保健・福祉研究所所管の「Findata」(フィンランド社会・保健データ許可局、関連情報)だ。フィンランド社会・保健データ許可局は、フィンランド保健・福祉研究所所管下で、年間予算約300万ユーロ、従業員数約30人規模の独立した非営利組織の形態をとっている。
Findataは、豊富なフィンランド全体に渡るデータセットへのアクセスを向上させることを目的とした研究者向けの中央集中型保健データアクセスポイントであり、保健・社会データの2次利用に関する法律(関連情報)に準拠して、2020年より運用されている。
Findataは、以下のようなサービス機能を提供している。
なお、前述の保健・社会データの2次利用に関する法律でカバーされるデータコントローラーは以下の通りである。
本連載第90回でフィンランドにおける2次利用目的の保健・社会関連データの取得プロセスに触れたが、Findataの場合、保健・社会データの2次利用に関わるコンセント管理について、オプトアウト方式を採用しているほか、イノベーション/開発を目的として民間企業やイノベーターがアクセスできるような仕組みを導入している。既に日本からは、武田薬品工業がFindataを活用したがん治療研究に参画した実績がある(関連情報)。加えてFindataは、データ利用に関わる透明性や説明責任の観点から、データ2次利用に関わる費用体系についても広く公開しており(関連情報)、参考になる。
本戦略ロードマップのFindataに関連するタスクでは、以下のような方向性を示している。
参考までに図2は、本連載第100回で紹介したノルディックイノベーションの「北欧のHealth Techに関する投資家のアプローチと視点」(2023年10月10日)(関連情報)より、北欧5カ国におけるHealth Tech投資額の国別推移(2019〜2022年、単位:百万米ドル)を示したものである。
北欧諸国の中では、デンマークやスウェーデンのHealth Tech投資規模と比較すると、フィンランドは小規模にとどまってきたことが分かる。今後、EHDSを介した多国間データ連携プラットフォームの整備を契機に、どれだけフィンランドへの海外直接投資を呼び込めるかが経済戦略上大きなテーマとなっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.