産業技術総合研究所は島根大学との共同研究において、温度差の向きと電流の向きを直交可能な、新たな熱電材料を開発した。第一原理計算により、熱流と電子の移動が交差するメカニズムも解明した。
産業技術総合研究所は2024年2月8日、島根大学との共同研究において、温度差の向きと電流の向きを直交可能な、新たな熱電材料を開発したと発表した。
1種類の材料の中で、結晶方位によって電子とホールの移動方向が異なる特性は、ゴニオ極性と呼ばれる。これは材料中を等方的に伝導する電子と、異方的(縦方向のみ)に伝導するホールのバランスにより生じる現象だ。
研究チームは、キャリア密度を制御したMg3Sb2とMg3Bi2の単結晶を作製し、ゼーベック係数の温度変化を計測した。Mg3Sb2はキャリア密度が1018cm−3以下でゴニオ極性を発現し、Mg3Bi2は1019cm−3の高濃度領域でも特性を示すことを確かめた。
また、Mg3Sb2とMg3Bi2は電子フェルミ面が球状であるのに対し、ホールフェルミ面は平らな形状をしている。島根大学が第一原理計算で検証したところ、このフェルミ面の異方性(バンド異方性)が、電子とホールの伝導の異方性を引き起こすゴニオ極性発現のメカニズムであることが明らかとなった。
同じようなバンド異方性を有する物質は、他にも多く存在する。それらの新しいゴニオ極性材料群から、より高性能な新材料の発見が期待される。
熱エネルギー(温度差)を電気エネルギーに変換する熱電発電は、振動や騒音がなく、環境への負荷を抑えて廃熱を活用できる発電システムだ。熱流と発電方向が直交する横型熱電モジュールは、熱劣化が生じにくく、従来型熱電モジュールの弱点だった耐久性を改善できる構造として注目されている。
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