デジタルツインを実現するCAEの真価

Simulation Governanceの活用カテゴリー「活用場面」の診断結果シミュレーションを制する極意 〜Simulation Governanceの集大成〜(7)(4/4 ページ)

» 2024年02月13日 09時00分 公開
[工藤啓治MONOist]
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C4「活用効果の定量的成果」

 一方、C4「活用効果の定量的成果」の設問である“シミュレーション活用効果はどの程度出ていると評価していますか?”に対しては、平均値は2.84となっており、C3よりもかなり良い平均値です。一見すると、効果測定が十分にできていないとするC3の結果と矛盾するようにも見えますが、おそらくは、定量的かどうかは厳密には曖昧かもしれませんが、それなりに効果は出ているという感触を持っているのではないかと解釈できます。ここのC3とC4の設問についての実際のところを、もっと深堀すると、具体的な課題がいろいろと見えてくると思われます。

C5「設計者展開の仕方」

 C5「設計者展開の仕方」の設問、“(代表的なCAEの領域を想定して)設計者が活用するCAEはどの程度成熟していますか?”に対し、以下のレベル4、レベル5とする企業がわずかに見られますが、部品を提供するサプライヤーが主のようです。

  • レベル5:設計業務の仕組みの中で、特別な支援なしに活用している
  • レベル4:専門家がカスタマイズしたツールを活用している

 アセンブリ製品を扱っている企業はやはり難しい面が多いと見受けられます。コメントを見ても、いわゆる設計者CAEは、適用範囲や製品を選び、二極化傾向にあるのかもしれません。

今回のまとめ

 以上、ざっくりとC1〜C5を眺めてきましたが、全体的にレベル4〜5が少ないことから、CAEを使ってはいるけれど、活用効果を意識する面が足りていない傾向が見えてきます。誤解を覚悟であえて言うならば、現状維持のマインドが主で、設計のより上流工程で使う意識、設計者に使ってもらう意識、効果を出さねばならという改革意識が少ないのではないか、と解釈できるかもしれません。これは技術の問題ではなく、CAEを利用している関係者、組織体の文化の問題と捉えていいのではないかと考えます。やはり、ガバナンス視点の重要性が見えてきます。

 今回の活用場面に関連して、毎度参照している「デザインとシミュレーションを語る」ブログの該当する箇所は以下の通りです。あらためてお読みいただけると、さらに理解が深まることと思います。

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筆者プロフィール:

工藤 啓治(くどう けいじ)

スーパーコンピュータのクレイ・リサーチ・ジャパン株式会社や最適設計ソフトウェアのエンジニアス・ジャパン株式会社などを経て、2024年1月まで、ダッソー・システムズに所属。現在、個人コンサルタントとして業務委託に従事。40年間にわたるエンジニアリングシミュレーション(もしくは、CAE:Computer Aided Engineering)領域における豊富な知見やノウハウに加え、ハードウェア/ソフトウェアから業務活用・改革に至るまでの幅広く統合的な知識と経験を有する。CAEを設計に活用するための手法と仕組み化を追求し、Simulation Governanceの啓蒙(けいもう)と確立に邁進(まいしん)している。


  • 学会活動:
    2006年から5年間、大阪大学 先端科学・イノベーション研究センター客員教授に就任し、「SDSI(System Design & System Integration) Cubic model」を考案し、日本学術振興会 第177委員会の主要成果物となる。その他、計算工学会、機械学会への論文多数
  • 情報発信:
    ダッソー・システムズ公式ブログ「デザインとシミュレーションを語る

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