一方、C4「活用効果の定量的成果」の設問である“シミュレーション活用効果はどの程度出ていると評価していますか?”に対しては、平均値は2.84となっており、C3よりもかなり良い平均値です。一見すると、効果測定が十分にできていないとするC3の結果と矛盾するようにも見えますが、おそらくは、定量的かどうかは厳密には曖昧かもしれませんが、それなりに効果は出ているという感触を持っているのではないかと解釈できます。ここのC3とC4の設問についての実際のところを、もっと深堀すると、具体的な課題がいろいろと見えてくると思われます。
C5「設計者展開の仕方」の設問、“(代表的なCAEの領域を想定して)設計者が活用するCAEはどの程度成熟していますか?”に対し、以下のレベル4、レベル5とする企業がわずかに見られますが、部品を提供するサプライヤーが主のようです。
アセンブリ製品を扱っている企業はやはり難しい面が多いと見受けられます。コメントを見ても、いわゆる設計者CAEは、適用範囲や製品を選び、二極化傾向にあるのかもしれません。
以上、ざっくりとC1~C5を眺めてきましたが、全体的にレベル4~5が少ないことから、CAEを使ってはいるけれど、活用効果を意識する面が足りていない傾向が見えてきます。誤解を覚悟であえて言うならば、現状維持のマインドが主で、設計のより上流工程で使う意識、設計者に使ってもらう意識、効果を出さねばならという改革意識が少ないのではないか、と解釈できるかもしれません。これは技術の問題ではなく、CAEを利用している関係者、組織体の文化の問題と捉えていいのではないかと考えます。やはり、ガバナンス視点の重要性が見えてきます。
今回の活用場面に関連して、毎度参照している「デザインとシミュレーションを語る」ブログの該当する箇所は以下の通りです。あらためてお読みいただけると、さらに理解が深まることと思います。
本診断にご参加いただける企業の皆さまを随時募集しておりますので、診断参加にご興味のある方は、本連載を読んだ旨を紹介欄の筆者メールアドレスまでご連絡ください。 (次回へ続く)
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工藤 啓治(くどう けいじ)
スーパーコンピュータのクレイ・リサーチ・ジャパン株式会社や最適設計ソフトウェアのエンジニアス・ジャパン株式会社などを経て、2024年1月まで、ダッソー・システムズに所属。現在、個人コンサルタントとして業務委託に従事。40年間にわたるエンジニアリングシミュレーション(もしくは、CAE:Computer Aided Engineering)領域における豊富な知見やノウハウに加え、ハードウェア/ソフトウェアから業務活用・改革に至るまでの幅広く統合的な知識と経験を有する。CAEを設計に活用するための手法と仕組み化を追求し、Simulation Governanceの啓蒙(けいもう)と確立に邁進(まいしん)している。
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