生物由来機能性成分/素材の2024年国内市場規模は前年比4.6%増に製造マネジメントニュース

富士経済は、生物由来の機能性成分/素材の国内市場を調査した結果をまとめた「生物由来有用成分・素材市場徹底調査 2024」を発表した。

» 2024年02月06日 08時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 富士経済は2024年2月1日、生物由来の機能性成分/素材の国内市場を調査した結果をまとめた「生物由来有用成分・素材市場徹底調査 2024」を発表した。

 この調査では、注目される生物由来の機能性成分/素材35品目(動物系15品目、植物系12品目、その他8品目)の市場について、現状を把握し将来を予想した他、今後の需要増加が期待される注目素材15品目に関しても現状の市場動向や将来性を整理した。

「生物由来有用成分・素材市場徹底調査 2024」の対象 「生物由来有用成分・素材市場徹底調査 2024」の対象[クリックで拡大] 出所:富士経済

乳タンパクが価格下落により落ち込み2023年の市場は前年比3.7%減

 生物由来有用成分・素材市場徹底調査 2024によれば、2023年の市場は前年比3.7%減の3012億円になると見込む。植物系やその他は堅調だったが、動物系は前年に好調だった乳タンパクが価格下落により落ち込んだ影響から約5%縮小すると予測。生産コストの上昇を価格に反映しにくく、また、海外の低価格品の流入もあるため、品目によっては価格競争が激化している。

 2024年は乳タンパクの需要が持ち直し、コンドロイチンやプラセンタ、乳酸菌などの好調により動物系が伸び、植物系はイヌリンや大豆イソフラボンなどが堅調、その他はNMNやGABAの需要が増えていることから、市場は前年比4.6%増の3150億円になると予想した。

生物由来の機能性成分/素材35品目の国内市場 生物由来の機能性成分/素材35品目の国内市場[クリックで拡大] 出所:富士経済

 今後は、機能性表示食品制度での新規ヘルスクレームによるユーザー開拓、高齢者の増加やフェムケアブームなどを受けた需要増加が期待される他、生産コストの上昇を受けた値上げ実施も想定されることなどから、市場は拡大が続くとみている。

 分野別では、乳酸菌市場は、腸内フローラの改善や便通の改善をはじめ、多様な健康機能性を訴求できる素材として普及している。近年は、生菌はプロバイオティクス、死菌(殺菌体)はプレバイオティクスとしての働きも訴求されている。

乳酸菌の国内市場の推移 乳酸菌の国内市場の推移[クリックで拡大] 出所:富士経済

 コロナ禍では、体調/免疫サポート機能が注目されたことから、市場は堅調に推移した。新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いてからは、日常的な健康意識の向上や機能の訴求により、機能性表示食品への採用が増加し市場は拡大を続けている。採用先としてはサプリメントや加工食品など、食品用途が大部分を占める。

 特に機能性表示食品での採用が増えており、従来はサプリメントが中心だったが、食品や飲料でも採用事例が増えている。免疫機能の維持や肌の潤い、胃の負担緩和、目や鼻の不快感緩和など、機能訴求が整腸作用以外に広がることで、機能性のコンセプトに合った食品形状での商品化が進められている。

 また、死菌が多数展開されるようになったことが、さまざまなタイプの食品への採用を促している。乳酸菌の研究が進むに伴いさまざまな機能性や特性が明らかになっており、新たな機能性を訴求する乳酸菌も登場。安全性や信頼性の高い素材であるため、機能性解明の進展は活用シーンや採用商品の増加につながりやすいことから、今後さらなる市場拡大が期待される。

 大豆イソフラボン市場では、食品、健康食品、医療機関で処方されるサプリメント、化粧品/トイレタリー用品、ペットフードなどに機能性原料として使用されるモノを対象とする。“骨の成分維持に役立つ”とする機能性表示食品の関与成分としての採用が多い。主に女性向けサプリメントに採用される機能性素材として安定した需要がある。

大豆イソフラボンの国内市場の推移 大豆イソフラボンの国内市場の推移[クリックで拡大] 出所:富士経済

 近年は大豆イソフラボンを用いてフェムテック/フェムケアに関連するサプリメントや化粧品、トイレタリー用品などの開発が活発であり、不眠や抑うつ、めまい、イライラなどの更年期の不調を改善する素材として注目されている。加えて、肌の弾力やハリ、新陳代謝を高める働きなど、女性の課題解決を訴求する素材としても採用が広がっている。

 しかしながら、内閣府の食品安全委員会で提言された上限摂取量の問題や「骨の成分維持」「骨の健康」などのヘルスクレームは体感性が弱いためリピート需要や摂取のきっかけを得にくいという課題がある。ただし、今後は、女性向けサプリメントの需要に加えて、訴求機能である骨や肌の健康維持にニーズがある高齢者層の増加により、市場は堅調に拡大するとみている。

 グルコサミン市場では、高齢者をメインターゲットとする関節サポート訴求のサプリメントで採用され、抗ロコモ素材として需要が確立している他、抗メタボや美肌などを訴求する機能性素材としても定着している。

グルコサミンの国内市場の推移 グルコサミンの国内市場の推移[クリックで拡大] 出所:富士経済

 関節サポート訴求サプリメント用途の需要一巡や競合素材の増加などにより、一時市場は停滞していたが、2021年はコロナ禍で外出自粛を受け運動不足から膝関節の不調を訴える人が増えたことから関節サポートのサプリメント需要が回復した。在宅時間の増加で飲み忘れが減った定期購入サプリメントの注文が増えたことで、市場は前年比2.3%増の44億円となった。

 2022〜2023年もサプリメントを軸に需要は堅調で市場は拡大を続けている。筋力低下対策で定期購入が増えたこともサプリメントの需要底上げにつながったことに加え、機能性表示食品としても採用商品が増えている。

 なお、グルコサミンは、関節サポートサプリメントで採用される機能性素材の5割以上を占めており、既に認知度も高いため、関節サポート訴求での需要の広がりには限界があるとみられる。現状グルコサミン以外の素材が採用されている、肌の保湿や体脂肪減少などを訴求したサプリメントでの採用促進などが期待される。

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