自動車向け炭素繊維複合材の市場は2035年に約9倍に、環境規制強化が後押し材料技術(1/2 ページ)

富士経済は2021年7月15日、炭素繊維複合材(CFRP、CFRTP)の市場調査を発表した。2035年の市場規模は2020年比2.8倍の3兆4958億円と見込む。

» 2021年07月19日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 富士経済は2021年7月15日、炭素繊維複合材(CFRP、CFRTP)の市場調査を発表した。2035年の市場規模は2020年比2.8倍の3兆4958億円と見込む。航空機向けの需要回復や風力発電のブレード用の伸長、自動車用での拡大が市場をけん引する要因となる。自動車用は2035年に2020年比8.9倍に拡大すると予測。厳しくなる環境規制への対応として、車体軽量化の開発が活発になるという。

 市場調査では、炭素繊維や中間基材、接着剤などの素材や、関連する部品、装置を対象とした。用途別の市場や、主要な関連企業の動向をまとめた。CFRPは炭素繊維に熱硬化性樹脂を含侵させて成形した加工品、CFRTPはマトリクス樹脂に熱可塑性の材料を使用した成形加工品だ。

CFRPとCFRTPの市場予測(クリックして拡大) 出典:富士経済

 CFRPは航空機と風力発電用ブレードが2大用途であり、風力発電用ブレードの需要が増加している。次いで、自動車や圧力容器、スポーツ、レジャーなどの用途が多い。2020年のCFRP市場は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により高単価な航空機用途が縮小し、前年比21.8%減のマイナスとなった。

 航空機用は2021年以降徐々に回復すると予測する。自動車用の需要拡大は2025年ごろからだとしている。自動車だけでなく航空機や風力発電用ブレード向けも好調に推移することから2035年の市場規模は2020年比2.8倍を見込む。

 CFRTPは成形加工時間を大幅に短縮できる点が注目されている。短/長繊維の加工品はATMなどの自動機器の他、ギアやモーターなどの静電摺動部品、エアコンや掃除機などの家電で採用が進んでいる。連続繊維の加工品は航空機で限定的な需要にとどまっている。2020年はCOVID-19の影響で需要先の設備投資が抑制され、市場規模は前年比21.8%減となったが、2021年以降で設備投資の回復に伴って需要が回復。2025年の市場規模が2019年を上回るとみている。2030年に向けてマルチマテリアル成形技術の蓄積や低コスト化が進み、自動車用を中心に市場が拡大すると見込む。

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