省エネで有価物も得られる新たな窒素循環技術の開発有害な廃棄物を資源に変える窒素循環技術(7)(3/3 ページ)

» 2024年01月24日 08時30分 公開
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研究開発の概要

 このような社会を実現するため、図3に示す3つの項目に分けて研究開発を進めています。

図3 筆者がPMを務めるムーンショットが研究開発事業における研究開発テーマ 図3 筆者がPMを務めるムーンショットが研究開発事業における研究開発テーマ[クリックで拡大] 出所:産業技術総合研究所

 項目1は、排ガス中のNOxの無害化/資源化技術です。この項目で開発する1つ目の技術はNOxをNH3に変換する触媒技術です。私たちはこの技術を「NOx to Ammonia(NTA)」と呼んでいます。

 また、変換されたNH3を取り出して、濃縮資源化する吸着技術も開発しています。NH3だけを選択的に吸着し、アンモニウム塩やNH3ガスとして取り出す技術を開発しています。この2つの技術を組み合わせ、循環NH3を生産するのです。

 項目2では、廃水中の窒素化合物をNH4+に変換する生物処理技術に取り組んでいます。この項目でも2つの技術開発に取り組んでいます。1つは「微好気NH4+変換技術」と呼んでいます。この技術の特徴は現在使われている活性汚泥法用の処理槽を転用できるという点にあります。こういった技術を「レトロフィット」と呼びます。

 生物処理は処理槽のサイズが大きく、設置に費用が掛かることが1つの難点ですが、レトロフィット可能なことで安価に技術を導入できるのです。もう1つの技術は高濃度窒素対応の「嫌気膜分離活性汚泥(AnMBR)法」です。

 AnMBR法は、窒素化合物をNH4+に変換できるだけでなく、炭素分をメタンとして取り出す一石二鳥の技術です。本研究の開発では、さらに窒素分が高い廃水でも適用できるようにすることで資源として得られるNH4+の量を増やすことを目指しています。

 また、項目2では、このように生産されたNH4+を集めて循環NH3を生産する技術も開発しています。排水中のNH4+を資源化する方法としては、本連載の第6回で紹介したアンモニアストリッピング法などがありますが、エネルギーがかかってしまうところが難点です。

 その問題を解決するために、膜で水とNH4+を分けて取り出す膜分離技術と、NH4+を吸着することで分けて取り出す吸着分離の技術を開発しています。どちらもアンモニアストリッピング法に比べ大きな省エネ効果が期待できます。

 項目3では、これらの技術の活用法と、その効果を検討しています。実際にこれらの技術を活用するには、技術を適切に組み合わせる必要があり、それらの組み合わせを最適化したプロセスの設計を行います。また、これらの技術が実用化した時に、実際に環境がどれだけ改善されるかなども検討しています。

最後に

 今回は、筆者がPMを務めるムーンショット型研究開発事業の概要を紹介しました。このプロジェクト以外にも、筆者が関係するものを含め、さまざまな研究開発が進められています。次回以降は、これらの開発技術をもう少し詳細に紹介し、将来どのような窒素循環技術が実用化されるか、のイメージを湧かせるお手伝いをさせていただければと思います。

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筆者紹介

産業技術総合研究所 首席研究員/ナノブルー 取締役 川本徹(かわもと とおる)

産業技術総合研究所(産総研)にて、プルシアンブルー型錯体を利用した調光ガラス開発、放射性セシウム除染技術開発などを推進。近年はアンモニア・アンモニウムイオン吸着材を活用した窒素循環技術の開発に注力。2019年にナノブルー設立にかかわる。取締役に就任し、産総研で開発した吸着材を販売中。ムーンショット型研究開発事業プロジェクトマネージャー。博士(理学)。


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