図2に、排ガス中のNOxの処理や排水中における窒素化合物の処理の現状、目指す将来像を示します。排ガス中のNOxは従来、本連載の第5回で紹介した通り、選択的触媒還元法(SCR)や無触媒脱硝システム(SNCR)などを利用して窒素ガス(N2)に無害化されています。
SCRやSNCRは、いずれもNH3を添加してNOxを還元する方法で、外部からのNH3の供給が必要になります(図2の左上)。これらの方法に代わり、新たな方法として、NOxをN2ではなく、NH3に変換し、循環NH3を生産することを考えています。
NOxをNH3に変換するのは、還元反応なので、還元剤の添加が必要ではあるのですが、水素(H2)や炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)など、さまざまな物質が利用可能になります。例えば、燃焼排ガスを処理する場合、燃料が水素や炭化水素ならそれをそのまま利用できますし、燃焼排ガス中にCOが含まれていれば、それも使えます。利用可能な還元剤は場所によって異なりますので、場所ごとに合わせた技術を利用できるようにしたいと考えています。
生産した循環NH3の用途としては、まず、NOxの半分をNH3に転換することで、残り半分のNOxを無害化することに使えます。さらに全てのNOxを循環NH3に変換できれば、そのまま燃料や合成NH3の代替としての活用が期待されます。
廃水中の窒素化合物の処理は、本連載の第6回で紹介した通り、活性汚泥法という生物処理が主です。活性汚泥法ではまず、硝化菌によって硝酸(NH3)などに変換後、脱窒細菌によりN2に無害化します。
ここで課題となるのがばっ気に必要な電気です。生物が硝酸などを合成する際に酸素が必要なため、空気を水中に送り込む必要があるのですが、その電気代が結構かかります。これを解決するために、省エネルギーで窒素分をNH4+に変換する新たな生物処理技術と、得られたNH4+を取り出し、循環NH3を生産する分離濃縮技術を開発しています。
これにより、処理に必要なエネルギーを減らすことができるだけでなく、これまで無害ですが価値のない窒素ガスにしていたところが、有価物である循環NH3として生産できるようになるのです。
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