ニュース
» 2023年12月27日 11時30分 公開

ノベルクリスタルテクノロジーが6インチβ型酸化ガリウム単結晶の作製に成功材料技術

ノベルクリスタルテクノロジーは、垂直ブリッジマン(VB)法で6インチβ型酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶の作製に世界で初めて成功したと発表した。

[遠藤和宏MONOist]

 ノベルクリスタルテクノロジーは2023年12月25日、垂直ブリッジマン(VB)法で6インチβ型酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶の作製に世界で初めて成功したと発表した。今後は、VB法による高品質単結晶育成技術の開発を継続するとともに、VB法の特徴である成長面方位の柔軟性を生かした基板開発に取り組む。

開発の背景と概要

 近年、シリコン(Si)製のパワーデバイスの性能を超える材料として炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)が注目を集めている。β-Ga2O3はこの2つの材料よりも大きいバンドギャップエネルギーを有するため、より高性能なパワーデバイスを実現する可能性があり、かつSiと同じように「融液成長法」によって高品質の単結晶基板を安価に製造できる新しい半導体の材料だ。

 これらの特徴から、β-Ga2O3のパワーデバイスが実用化されれば、家電や電気自動車(EV)、鉄道車両、産業用機器、太陽光発電、風力発電などのパワーエレクトロニクス機器のさらなる低損失/低コスト化が可能となる。そのため、国内外の企業および研究機関が開発を進められている。しかしながら、β-Ga2O3パワーデバイスの低コスト化を実現し、広く社会に普及させるためには、β-Ga2O3基板の大口径化が必須であり、単結晶の大型化が望まれている。

EFG法の概要(a)とVB法の概要(b) EFG法の概要(a)とVB法の概要(b)[クリックで拡大] 出所:ノベルクリスタルテクノロジー

 一方、ノベルクリスタルテクノロジーは、EFG(Edge-defined Film-fed Growth)法を用いた単結晶製造技術を開発し、この技術で現在研究開発用として2インチおよび100mmの基板の製造/販売を行っている。

 さらなる基板の大口径化/高品質化を達成するために、JST 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)で、VB法により6インチβ-Ga2O3基板の開発に取り組んできた。VB法によるβ-Ga2O3単結晶育成技術は信州大学が発案し開発を進め、2インチおよび4インチの単結晶の作製に成功。こういった状況を踏まえて、ノベルクリスタルテクノロジーは信州大学からこの育成技術を継承し、継続的に大口径化の開発を行っている。

 今回は、VB法を採用した6インチ結晶育成装置を開発し、VB法により6インチ単結晶の作製に成功した。さらに、結晶の評価/解析を担当する産業技術総合研究所が、EFG法で作製した単結晶とVB法を用いて作製した単結晶から取得した基板をX線トポグラフィ法により評価し比較。その結果、VB法で作製した結晶では、EFG法で作製したもので見られた高密度の直線状欠陥が、大幅に抑制されていることを発見し、品質的にもVB法によって作製した結晶が優れていることが実証された。

VB法で作製した6インチ単結晶の特徴

 ノベルクリスタルテクノロジーが結晶製造で採用しているEFG法は引き上げ法の1つで、大きな成長速度を得やすい育成方法だ。しかし、得られる結晶が板状で、そこから円形の基板をくりぬく必要があるため、加工時に不要部分が生じてコストが高くなる他、β-Ga2O3結晶の強い異方性に起因して結晶引き上げ方向の制約が強く、得られる基板の面方位が限定されるという課題がある。

 開発を進めているVB法について、原料を格納したるつぼを温度勾配がある炉内に格納し、原料を溶融させた後にるつぼを引き下げて凝固させる育成方法だ。よって、るつぼと同じ形の結晶が得られるため、円筒形のるつぼを使えば円筒形の結晶が取得でき、基板化加工の際の不要部分が大幅に少なく、低コスト化につながる。

 加えて、引き上げ法による育成と異なり、るつぼ内の融液を凝固させる育成法であるため、結晶の異方性に起因する成長面の制約を受けにくく、さまざまな基板の面方位を作製可能であり、EFG法の課題を解決できると期待されている。引き上げ法と比べ、温度勾配が小さい環境での育成も可能なため、結晶の高品質化に対応し、結晶成長方向に対して垂直に基板を取得でき、ドーパント濃度の面内均一性の向上も見込める。

 なお、VB法を用いた6インチ結晶の育成装置で得られた結晶は、種結晶から最終固化部まで透明で、単結晶だと分かった。定径部(最も径が広い部分)の直径は6インチ以上で、6インチ基板に使える結晶だった。このことから、種結晶の方位を引き継いだ単結晶を成長できていることが判明した。

VB法で作製した6インチ単結晶の全体像(a)、種結晶側の外観(b)、最終固化部側の外観(c) VB法で作製した6インチ単結晶の全体像(a)、種結晶側の外観(b)、最終固化部側の外観(c)[クリックで拡大] 出所:ノベルクリスタルテクノロジー

X線トポグラフィによる基板の品質評価の詳細

 また、X線トポグラフィ法を用いて行った結晶品質の評価の結果、EFG法で作製した基板には直線状欠陥が高密度に発生していた一方で、VB法で作製した基板には直線状欠陥がほぼ発生していないことが分かった。

 VB法で作製した基板の表面に生じた網目状は転位網であると考えた。EFG法で作製した基板の表面には網目状のコントラストが確認されなかったが、直線状欠陥などによる大きなひずみ場のため見えにくくなっているとした。これらの観察結果から、VB法を用いて作製した基板は、EFG法を用いて作製した基板よりも結晶品質が向上していると結論付けた。

X線トポグラフィによる観察像。(a)はEFG法によって作製した基板、(b)はVB法によって作製した基板 X線トポグラフィによる観察像。(a)はEFG法によって作製した基板、(b)はVB法によって作製した基板[クリックで拡大] 出所:ノベルクリスタルテクノロジー

⇒その他の「材料技術」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.