金属中の水素原子の流れを可視化し、動画撮影できる新手法を開発研究開発の最前線

東北大学は、金属中の水素原子を観察する新しい手法を開発した。汎用的な光学顕微鏡と、水素原子と反応して色が変わる高分子を用いることで、金属中の水素原子の流れを低コストで容易に動画撮影できる。

» 2023年12月19日 11時00分 公開
[MONOist]

 東北大学は2023年11月27日、金属中の水素原子を観察する新しい手法を開発したと発表した。汎用的な光学顕微鏡と、水素原子と反応して色が変わる高分子を用いることで、金属中の水素原子の流れを低コストで容易に動画撮影できる。

 同研究では、純Ni(ニッケル)箔中の水素原子の拡散を調べた。まず、低コストで重合が容易な高分子ポリアニリンをNi箔の表面に成膜した。ポリアニリンは金属中の水素原子と反応すると紫から白に変色する性質を持つ。この性質を利用して、Ni箔に侵入した水素が拡散する様子を可視化し、光学顕微鏡で観察した。

 その結果、水素はNiの結晶粒同士の境界部である結晶粒界で優先的に拡散すること、空間が大きい粒界ほど水素の流れる量が多いことが判明した。

キャプション (a)従来技術と同研究で開発した水素観察技術の性能比較。(b)ポリアニリンを用いた水素可視化法の断面模式図[クリックで拡大] 出所:東北大学
キャプション Ni表面に成膜したポリアニリンの光学顕微鏡写真。Niの粒界に対応する位置で色の変化が顕著なため、Niの粒界で水素が優先拡散することが示されている[クリックで拡大] 出所:東北大学

 今回開発した、ポリアニリンを用いる水素観察手法は、他の金属にも適用が可能だ。光学顕微鏡の使用により、サブmm(=1mmの10分の1程度の長さ)規模の広い視野において、原子レベルの金属の構造と水素の流れをμmサイズで観察し、動画で撮影できる。

 利用時にCO2を排出しない水素をエネルギー源とする水素社会を構築するためには、水素の振る舞いを理解する必要がある。金属中の水素原子の振る舞いを観察できる同手法は、今後、耐水素材料や水素透過膜のような機能性材料開発への応用が期待される。

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