東京大学は、強い磁場を加えたグラファイトにおいて、比熱が二重ピーク構造となる現象を発見した。この構造は限られた条件下でしか観測できず、また同じ条件でも磁気熱量効果や電気抵抗では見られなかった。
東京大学は2023年11月7日、強い磁場を加えたグラファイトにおいて、比熱が二重ピーク構造となる現象を発見したと発表した。フランス原子力庁(CEA)、PSL研究大学、コーネル大学、スロバキア科学アカデミー、東北大学、ネール研究所、フランス国立強磁場研究所との共同研究による成果だ。
今回の研究では、高純度の天然グラファイトを利用。これに強い磁場を加え、特殊なフェルミ状態密度を誘起した状態で、極低温条件下における比熱の磁場変化を計測した。その結果、磁場の変化に伴い、比熱の二重ピーク構造が観測できた。
この二重ピーク構造は、フェルミ状態密度におけるピーク構造の幅が0.1meV以下程度という、限られた条件下でしか観測できなかった。同じ条件でも磁気熱量効果や電気抵抗では見られない構造で、比熱の磁場変化だけに発生する。
また、また、0.09K(−273.06℃)までの比熱を計測すると、熱エネルギーが低下する低温の環境では、二重ピーク構造が重なり、分裂幅が一重ピークに変化した。
強磁場や低温環境で、磁場に伴って物質の電気抵抗や磁化率が振動する量子振動は、Lifshitz−Kosevich理論(LK理論)により論じられてきた。同研究の二重ピーク構造は、LK理論と異なる結果で、その解析により金属の性質に関わる電子状態を調べることが可能となる。今後、電子デバイスなどに用いる機能性材料の開発につながることが期待される。
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