京都府立医科大学と東北大学は、大動脈弁治療により消化管出血性病変が改善することを明らかにした。循環器疾患の治療と消化管粘膜病変の密接な関連を示す画期的な成果で、治療の改善につながることが期待される。
京都府立医科大学は2023年10月19日、大動脈弁狭窄(きょうさく)症患者に対する大動脈弁のカテーテル治療が、消化管出血性病変の数や大きさを改善することを発表した。東北大学との共同研究によるもので、循環器疾患の治療と消化管粘膜病変が密接に関連することを示す成果となる。
大動脈弁狭窄症は、しばしば消化管出血を合併する。大動脈弁の狭窄部に血液が流れることで生じる強い「ずり応力」が原因とされ、これによって止血因子が破壊される止血異常症や、出血しやすい異常血管が出現する消化管血管異形成が生じる。
今回、貧血のある重症大動脈弁狭窄症患者50人を対象とし、内視鏡検査による臨床経過観察と解析を実施した。その結果、大動脈弁のカテーテル治療前に、94%の患者に血管異形成が存在することを確認した。1人当たりの血管異形成は平均12個で、小腸の血管異形成が最も多く、67%の患者が有していた。
また、10%の患者で、自覚症状がなくても血管異形成からの出血が確認できた。このことから、血管異形成からの出血が、貧血の原因である可能性が示唆される。
さらに、大動脈弁の治療後、止血因子のフォンウィルブランド因子の過度の分解がなくなり、貧血が改善した。半年〜1年後には、消化管血管異形成の数が減少し、大きさも縮小。出血を起こしている血管異形成もなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.