Bluetooth SIGが無線通信規格として利用が拡大するBluetooth技術のロードマップについて説明。低消費電力通信規格であるBluetooth Low Energy(BLE)について、通信速度を現在の4倍の8Mbpsに向上した後、5GHz帯や6GHz帯に対応させていく方針である。
Bluetooth SIG(Special Interest Group)は2023年10月16日、東京都内で会見を開き、無線通信規格として利用が拡大するBluetooth技術のロードマップについて説明した。2024年前半に高精度距離測定に関する仕様策定を完了してから、2025〜2026年には低消費電力通信規格であるBluetooth Low Energy(BLE)の通信速度を現在の2Mbpsから4倍の8Mbpsに向上した後、Wi-Fiも使用している5GHz帯や6GHz帯にBLEを対応させていく方針である。
Bluetoothの技術や関連商標を管理する非営利団体のBluetooth SIGは、2023年9月で設立から25周年の節目を迎えた。現在は、平均で50以上の仕様策定プロジェクトを常時実施するなど標準化団体としての活動だけでなく、製品認証機関、特許/商標ライセンス管理機関、業界団体としての活動も拡大している。Bluetooth SIG CMO(最高マーケティング責任者)のケン・コルドラップ(Ken Kolderup)氏は「25年前にほんの数社が集まって立ち上げた組織だが、その当時にここまでの成功を収めることは誰も想像できていなかっただろう」と語る。
Bluetoothに並んで広く利用されている無線通信規格としてはWi-FiやLTE/5Gなどのセルラー通信がある。しかし、標準化団体、製品認証機関、特許/商標ライセンス管理機関、業界団体といった全ての機能を1つの組織に集約しているのはBluetooth SIGが管轄するBluetoothだけであり、この組織体制が成功の一因になっているという。
Bluetooth搭載デバイスの出荷台数も増加の一途をたどっている。2023年度は50億台を超える見込みで、2027年度には70億台を上回ると予想されている。このようなBluetoothの成長は、初期をけん引したワイヤレスオーディオ、足元の需要拡大を支えるコネクテッドコンシューマーエレクトロニクス、そして今後の市場拡大が期待されるコネクテッド産業という3つの潮流で成り立っている。
2023年のBluetooth搭載デバイス出荷台数のうち、ワイヤレスオーディオは13億台、コネクテッドコンシューマーエレクトロニクスは16億台、コネクテッド産業は2億台となっている。2027年には、ワイヤレスオーディオは16億台以上、コネクテッドコンシューマーエレクトロニクスは30億台以上、コネクテッド産業は7億台以上に増加する見込みだ。
2024年前半のリリースを目指しBluetoothの新たな仕様として策定が進んでいるのが、屋内ロケーション(位置検出)における高精度距離測定である。現在は20mの距離測定に対して検知精度が±20cm程度になるような実装でBluetoothの距離測定は行われているが、ここからさらなる高精度化を目指すことになる。忘れ物タグや自動車のデジタルキー、アセットトラッキング(資産追跡)など向けを想定している。コルドラップ氏は「UWB(Ultra Wide Band)の方が高精度だが、Bluetoothは距離測定の精度に応じてスケーラブルに実装できることが大きな特徴だ。高精度距離測定の導入により、距離測定アプリケーションの80%をカバーできるとみている」と説明する。
その後は1〜2年に1回の頻度で大きな仕様拡張を行う方針である。2025〜2026年をめどとしているのがBLEの高速化だ。現在のBLEのデータ転送速度は最高2Mbpsだが、これを4倍の8Mbpsに向上する。これによって、より高音質のワイヤレスオーディオや高速応答のコントローラーを実現できるようになる。
このBLEのデータ転送速度向上は現行の2.4GHz帯で行うが、5GHz/6GHz帯への対応によってさらなる高速化や低遅延にもつなげていく考えだ。「Bluetoothの次の25年を支える技術強化になるだろう」(コルドラップ氏)としている。
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