東北大学は、汎用プラスチックの基礎的構造を観察できる新たな電子顕微鏡解析手法を開発した。ポリエチレンナノ結晶を電子染色なしで可視化する同手法により、結晶内部の分子鎖配列などを直接解析可能になった。
東北大学は2023年9月21日、汎用プラスチックの基礎的構造を観察できる新たな電子顕微鏡解析手法を開発したと発表した。ポリエチレン(PE)ナノ結晶を、電子染色することなく可視化する同手法により、結晶内部の分子鎖配列や配向などを直接解析できるようになった。
PEは、国内プラスチック生産量の約4分の1を占め、プラスチック材料の中でも最も多く利用されている。多数の炭素原子と水素原子が長いひも状につながった高分子で、この分子鎖の規則的な配列が、構造の基本単位である厚さ20nmほどの板状結晶(ラメラ晶)となる。ただ、ラメラ晶は電子線の照射で破壊されるため、従来の電子顕微鏡法では観察が困難だった。
研究グループは、平均厚みが18nmのラメラ晶を含むPE試料に6nm間隔で収束電子線を走査し、336万枚の電子回折図形を取得した。さらに、取得した図形の回折スポットの強度と角度を抽出することで、ラメラ晶の形態や内部の分子鎖の配向を可視化することに成功した。
観察の結果、PE試料の内部に、形態や分子鎖配向が異なる多様なラメラ晶が存在していた。また、平行に並んだラメラ晶(積層ラメラ晶)と単独のラメラ晶では、分子鎖の配向様式が明らかに異なることなどが判明した。
ラメラ晶の量や大きさ、形状、向きなどは、材料の力学強度や耐熱性、透明性といったさまざまな物性に関与しているため、制御することで物性を変化させることができる。
開発した手法は、結晶性の高分子材料全般に応用可能なことから、高機能材料の開発や省資源化など、カーボンニュートラル社会の構築に役立つことが期待される。
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