G-SHOCKを含むカシオの時計パッケージにおけるエコ化の現状について、2023年度は、2020年度比でバージンプラスチックの使用量が約23%削減、梱包(こんぽう)材の再生材使用率が紙で約64%になる見通しだという。そして、2024年度はこれをさらに進展させて、2020年度比でバージンプラスチックの使用量を約54%削減し、梱包材の再生材使用率を紙で約70%に引き上げる目標を掲げる。
「2023年度から2024年度にかけて、特に再生プラスチックの使用率を大きく引き上げる目標を掲げているが、バージンプラスチックの使用量を減らしていく分、その代替となる再生材の使用率は上がっていくだろう。また、商品パッケージだけでなく、生産拠点から小売店までの輸送で用いる梱包にも再生材を積極的に使用するなどして、目標達成を成し遂げたい」と工藤氏は意気込む。
さらに、環境に配慮したパッケージのさらなる対応として、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、G-SHOCKや「BABY-G」など一部の海外モデルに採用されている金属素材を用いたパッケージ(TIN缶)を廃止し、他のエコ素材を使用したパッケージを採用する方向で開発を進めていくという。また同時に、海洋生物や人体に影響を与えるとされるマイクロプラスチックになりやすい発泡プラスチック(スポンジやミラーマット)の削減にも取り組んでいく方針を掲げる。
「これらについては、長期的に取り組んでいくというものではなく、すぐにでも着手すべき喫緊の課題だと認識している。中でも発泡プラスチックの削減に関しては、代替材に置き換えたり、使用しなくて済むのであれば使わないという判断を下したりなど、削減に向けてスピード感をもって対応していきたい」(工藤氏)
ちなみに、時計本体を包むフィルムもマイクロプラスチック化しやすいということで、エコパッケージを採用するG-SHOCKなどを中心に、フィルムからコットン製の袋へと置き換わっている。
G-SHOCK 40周年モデルに採用されたエコパッケージの取り組みからも分かる通り、カシオは環境への配慮とともに、「パッケージは単なる箱ではなく、商品(時計)の一部である」という強い思いの下、製品コンセプトにマッチした先進的なパッケージ開発を推進している。
その原動力の1つとなっているのが、社内外で関わるパートナー企業や部門との信頼関係、協力体制だ。「例えば、パッケージの量産設計を委託しているパートナー企業は、カシオ側から上がってきた企画に対して、どのような設計にすれば量産できるのか、構造的にどのような工夫が必要なのかといった部分まで踏み込んで、納得の行く答えを追求してくれている」(工藤氏)。また、こうした社外のパートナー企業と長年築き上げてきた強い関係性に加え、資材部やデザイン部などの社内の関連部門とコンセプトなどをしっかりと共有して、信頼関係を築きながら物事を進めていくことも欠かせない要素だという。
さらに、変化をマイナスに考えず、ポジティブに捉えることが大切だと工藤氏は訴える。「環境の変化は、新しいパッケージを創出できるチャンスだ。世の中には何かが変わらないと変えづらいものが意外とある。何かが変わったときこそ、新しいことがやりやすくなる。エコや環境保護の観点から世界中でさまざまな法規制などが策定されているが、われわれはこれらをリスクとして捉えたり、足を引っ張るものとしてネガティブに考えたりするのではなく、新しいパッケージを創出できるチャンスだと考えている」(工藤氏)。また、その際には、既存のパッケージの概念にとらわれない自由な発想を持つことが大切だという。
当然、新しいパッケージの開発にはハードルがつきものだ。こうした障壁を前にした際、工藤氏は「できない理由を探すのではなく、できる方法を考えることで必ず実現できる」という信念を貫き通し、カシオの時計パッケージの開発を長年支え続けてきた。「できない理由はすぐにたくさん出てくるものだ。やりたくなければそれでもいいかもしれない。だが、『これは面白い』『面白そうだ』と感じたことであれば、どんなに困難なものでも、できる方法を考え抜くべきだ。そうすれば必ず実現の道が開けてくる」(工藤氏)。
主役である商品を守り、その魅力をどれだけ引き出せるか――。環境配慮への機運が高まる今こそ、商品の引き立て役であるパッケージの役割がより一層重要なものになっていくに違いない。エコといえども決して地味にまとまらず、“らしさ”を存分に表現しているG-SHOCK 40周年モデルに採用されたエコパッケージの取り組みは、時計に限らず、あらゆる商品のパッケージ開発の参考になることだろう。
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