サステナブルなモノづくりの実現

「G-SHOCK」40周年記念モデル“第3弾”は3倍硬くて地球に優しいサステナブル設計(1/2 ページ)

カシオ計算機は「CASIO NEW WATCH COLLECTION MARCH 2023 新製品発表会」を開催し、腕時計ブランド「G-SHOCK」の40周年記念モデル“第3弾”の製品ラインアップについて、コンセプトやデザインに込められた思い、それらを実現するために取り入れた技術などを紹介した。

» 2023年03月17日 08時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 カシオ計算機(以下、カシオ)は2022年3月15日、「CASIO NEW WATCH COLLECTION MARCH 2023 新製品発表会」を開催し、腕時計ブランド「G-SHOCK」の40周年記念モデル“第3弾”の製品ラインアップ「RECRYSTALLIZED SERIES」について、コンセプトやデザインに込められた思い、それらを実現するために取り入れた技術などを紹介した。

G-SHOCK 40周年記念モデル“第3弾”を発表

 1983年に誕生したG-SHOCKブランドは、2023年で40周年を迎える。そのアニバーサリーモデルの第3弾として、2023年4月21日に販売を開始するのが、外装パーツに高硬度ステンレス材を採用した「GMW-B5000PG(ゴールド)/GMW-B5000PS(シルバー)」と、初号機のデザインを復刻した「DW-5040PG(ブラック)」だ。販売価格(税込み)はGMW-B5000PG/GMW-B5000PSが12万1000円、DW-5040PGが3万8500円となる。

「G-SHOCK」の40周年記念モデル“第3弾”として展開する「RECRYSTALLIZED SERIES」。左から「GMW-B5000PG」「DW-5040PG」「GMW-B5000PS」 「G-SHOCK」の40周年記念モデル“第3弾”として展開する「RECRYSTALLIZED SERIES」。左から「GMW-B5000PG」「DW-5040PG」「GMW-B5000PS」[クリックで拡大] ※出所:カシオ計算機

 「いずれのモデルもオリジン(G-SHOCK初号機『DW-5000C』)にフォーカスし、そのコンセプトを回帰しながらも、単なるオマージュではなく、現代解釈をしっかりと加えて進化、アップデートした製品に仕上がっている」と、商品企画を担当した同社 技術本部 企画開発統轄部 企画部 第一企画室 リーダーの泉潤一氏は述べる。

ステンレス材の硬度を3倍にする再結晶化/深層硬化処理

 GMW-B5000PG/GMW-B5000PSは、1983年4月に発売された初号機(DW-5000C)のフォルムを継承し、2018年の35周年に登場したフルメタルモデル「GMW-B5000D」をベースに、新たに開発したステンレス専用の再結晶化処理と深層硬化処理を施した高硬度ステンレスモデルだ。マットな質感の表面に細かいメタルの破片をちりばめたような独特の結晶模様が特徴となっている。

GMW-B5000PGGMW-B5000PS ステンレス専用の再結晶化処理と深層硬化処理を施した高硬度ステンレスモデル「GMW-B5000PG」(左)と「GMW-B5000PS」(右)[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

 そして、DW-5040PGは初号機のデザインを復刻したモデルとなっており、フェース部分には初号機を生み出した開発チーム「PROJECT TEAM “Tough”」の文字が印刷されている。こちらは樹脂製のモデルとなっており、ベゼルやバンドにはバイオマスプラスチックを採用する。また、メタルパーツが用いられているケースバック(裏ブタ)、遊環、美錠(尾錠)には、GMW-B5000PG/GMW-B5000PSで採用されたステンレス専用の再結晶化処理と深層硬化処理が施されている。

初号機のデザインを復刻した「DW-5040PG」ステンレス専用の再結晶化処理と深層硬化処理を施した「DW-5040PG」の美錠と遊環 初号機のデザインを復刻した「DW-5040PG」(左)、ステンレス専用の再結晶化処理と深層硬化処理を施した「DW-5040PG」の美錠と遊環(右)
カシオ計算機 技術本部 企画開発統轄部 企画部 第一企画室 リーダーの泉潤一氏 カシオ計算機 技術本部 企画開発統轄部 企画部 第一企画室 リーダーの泉潤一氏

 「もともと再結晶化処理と深層硬化処理の技術は、チタン素材を用いたG-SHOCKの最高峰ブランド『MR-G』で採用されてきたものだ。だが、ステンレス材への転用が難しく、これまで量産化には至らなかった。しかし、40周年企画に向けて、設計、品質保証、企画、デザインの各チームが連携しながら技術開発を諦めずに継続し、ステンレス専用の再結晶化処理と深層硬化処理の実現に成功した」(泉氏)

 処理の流れは次の通りだ。まず、ベースとなるステンレス材に対して、再結晶化処理(高温の熱処理)を施す。これによりわずかな結晶模様が現れる。続いて、炭素ガスをステンレス材の表面に浸透させる深層硬化処理を施すと、結晶模様が安定してよりはっきりと現れるようになる。なお、結晶模様は形状や厚みによって模様、色調、光沢感が異なり、1点ずつ異なった風合いを楽しめるという。そして、最後に表面処理としてシルバーモデルのGMW-B5000PSにはTIC(チタンカーバイド)処理を、ゴールドモデルのGMW-B5000PGにはIP(イオンプレーティング)処理を施して仕上げる。「この技術は表面処理(TIC/IP)の下層に硬質層を作る技術であり、ステンレス材自体の表面の硬度を高めるものだ。これにより、通常のステンレス材の3倍の硬度を実現できる」(泉氏)。

ステンレス専用の再結晶化処理と深層硬化処理のイメージ ステンレス専用の再結晶化処理と深層硬化処理のイメージ[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機
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