DICは、近赤外蛍光色素やそれを用いた樹脂材料が、米国マサチューセッツ工科大学の新技術「BrightMarker」に採用されたことを発表した。
DICは2023年9月11日、近赤外蛍光色素やそれを用いた樹脂材料が、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の新技術「BrightMarker(ブライトマーカー)」に採用されたことを発表した。BrightMarkerは、目に見えないタグを対象物に埋め込みそれを追跡する技術で、MITは、米国で今秋開催されるユーザーインタフェース分野のトップカンファレンス「UIST2023」で同技術の研究結果を発表予定だ。
近赤外蛍光色素は、バイオイメージング(細胞活動などを画像解析する技術)などの用途で利用されているが、耐熱性や相溶性の課題から蛍光を発する樹脂材料としての実用例はほとんどない。一方、DICの近赤外蛍光色素は、他社製品にはないメリットとして、高い耐熱性を持ち樹脂に混練できるという特性を持つことから、手術や検査などで使用される樹脂製の医療用具などに採用されている。DICは、これまで複数の大学や企業と連携し、近赤外蛍光色素を活用した技術開発にも携わり、医療の発展や社会課題の解決に貢献してきた。
今回の採用事例に関して、同社の近赤外蛍光色素は、3Dプリンタ用の樹脂フィラメントに混練/成型できるため、MITが開発した新技術であるBrightMarkerの蛍光タグとしてQRコードなどの情報パターンを対象物に印字する上で重要な役割を果たしている。近赤外領域で発光可能な蛍光タグであれば、人の目に見えないため、意匠性などを損なうことがない他、秘匿性の高い情報を埋め込むことが可能になり、赤外線カメラでのみ情報を読み取れる。
MITの発表した事例では、BrightMarkerがモーショントラッキング(動きを追跡する機能)や仮想現実(VR)技術の向上などにも活用できるとしている。例えば、蛍光タグが埋め込まれたブレスレットを手に着用すると、着用者の動きがVR環境でデジタル化して再現できることなどを示している。また、蛍光色素が採用された蛍光タグでは、可視光の影響を受けにくいため、従来のモーショントラッキングで使用される技術と比較して、より高感度で高精度な情報を読み取れる。
DICは、長期経営計画「DIC Vision 2030」で掲げたデジタル社会への貢献に向けて、スマートリビング領域における機能性材料の事業拡大を重要戦略の1つに位置付けている。同社はMITが開発したBrightMarkerが、拡張現実(AR)やVRに代表されるような仮想のデジタル世界と現実世界に属するそれぞれのモノをシームレスに接続するための重要な技術になりうると考えている。今後は、BrightMarkerの用途展開が可能であると踏まえ、引き続き市場調査を進め、さまざまな社会課題解決に貢献していく見通しだ。
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