DICは、グローバルに展開している主力事業のサプライチェーン全体を最適化する「デジタルSCM(サプライチェーン・マネジメント)プラットフォーム」の運用を開始した。
DICは2023年4月24日、グローバルに展開している主力事業のサプライチェーン全体を最適化するために、先進のデジタルテクノロジーを活用した「デジタルSCM(サプライチェーン・マネジメント)プラットフォーム」の運用を開始したと発表した。まずはカラーマテリアルやパフォーマンスマテリアルの一部の地域/事業から運用を開始し、2025年までにグローバルで展開する予定だ。
同社ではこれまで、世界中の顧客から集めた需要情報や各国工場の生産計画、各拠点の製品/原材料の在庫管理、調達計画など、サプライチェーン上の多様な計画業務を地域/事業単位で別々に行ってきた。
また、各拠点で頻繁に起こる納期調整や数量変更、在庫管理、変更手続きなど、社内外の関係者との煩雑な調整業務は、Excelなどによる手集計あるいはメールなどによる属人的な伝達手段で行われていたことから、スピード感をもって正確かつ効率的に行うことが困難だった。
そこで、80人を超える社内外の関係者が参画する「SCM構築プロジェクト」の下、「全体最適」をスローガンとしたグローバルSCMの標準モデル構築に取り組み、デジタルSCMプラットフォームの立ち上げを実現した。加えて、同プラットフォームを支えるSCMソリューションにはKinaxis(キナクシス)の「RapidResponse」を採用している。
デジタルSCMプラットフォームでは、これまで国や地域、拠点ごとに異なった業務プロセスを属人的に回す「個別最適」を解消するために、グローバルで業務を標準化し、デジタルを活用した仕組みで属人性を排除する「全体最適」の標準業務プロセスを新たに確立した。これにより、グローバルで需給を一元管理する体制が整い、業務変革や効率化、顧客サービス率向上が期待される。
キャッシュフロー改善、顧客サービス率向上、業務の効率化を切り口としたグローバルで標準化したSCM業務パフォーマンス指標(KPI)も設定しており、アップデートされたKPI情報をグローバルに統一し可視化/共有する仕組みも備えた。これにより、在庫適正化、納期順守率の向上、欠品などに伴う各種調整業務の削減効果が得られる見通しだ。
さらに、サプライチェーン上のモノの流れを管理するSaaS型デジタルツールのRapidResponseをグローバルで標準化されたSCMプランニングツールとして導入し、各拠点で別々に作られている販売計画、在庫計画、生産キャパ管理などのSCMに必要な情報を1つのデジタルプラットフォームに統合し、全体の可視化を実現している。これによりデータ収集/計算/チェックに関わる業務効率化や統計的需要予測の活用により計画精度の向上が見込める。
同社では、不確実性が高い事業環境下でのサプライチェーンにおいては、グループ内のみならず、原料サプライヤー、製造委託先、ディストリビューター(物流業者)、顧客など社外のステークホルダーとも多様なシステム連携を進めることを視野に入れている。一方、サプライチェーン情報のデジタル化は、サプライヤーを含めたサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現に向けた温室効果ガス(GHG)排出量の計算/可視化など、新たな取り組みにも有効な手段となり得ると想定する。
将来は、サプライチェーン領域でも、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ブロックチェーン(分散台帳)などの技術実装が進むと考え、今後も先進のデジタル技術を積極的に取り込み、グローバルサプライチェーンの一層の強化を図っていくという。
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