東レは、ナイロン樹脂が備えている高温剛性や成形加工性を維持しながら、汎用制振材(ブチルゴム)と比べて4倍の制振性を有する超高制振ナイロン樹脂を開発した。
東レは2025年1月22日、ナイロン樹脂が備えている高温剛性や成形加工性を維持しながら、汎用制振材(ブチルゴム)と比べて4倍の制振性を有する超高制振ナイロン樹脂を開発したと発表した。
同社は電気自動車(EV)や自動運転に対応した自動車における車内快適空間を生み出す新素材として、さまざまな部材へ適用を見据えた顧客への超高制振ナイロン樹脂のサンプル提供を開始しており、2026年度に現有設備での本格生産化を目指す。
EVは通常の自動車と比べてエンジンノイズが減少する一方で、路面から発生する低周波のロードノイズ抑制や車外騒音規制の強化が求められている。
この騒音を抑制する目的で、制振性が低い一般的な熱可塑性樹脂でなく、ブチルゴムなどゴム系の制振材料がこれまで使用されてきた。しかし、ゴム系の制振材料は熱可塑性を有さないため複雑な形状の部品や賦形などの二次加工には不向きという課題があった。さらに、自動車や電気電子の部品などに適用する際には必要な高温(〜120℃)時の硬さ/剛性に課題があり、使用部位が限られていた。
こういった状況を踏まえて、東レは高温時の剛性や成形加工性に優れるナイロン樹脂と制振性が高い他樹脂を組み合わせるポリマーアロイを検討した。通常のポリマーアロイ技術ではマイクロメートルオーダー程度の分散構造となり特性発現が困難だったが、東レ独自の「ナノアロイ(NANOALLOY)技術」を適用することで100〜300nmのナノメートルオーダーでそれぞれの樹脂相が連続相となる共連続型構造を形成。これにより、制振性と成形加工性、高温剛性に優れたナイロン樹脂を実現した。
ナノアロイ技術を適用した超高制振ナイロン樹脂は、制振性の指標となる損失正接を既存ナイロン樹脂の約28倍、ブチルゴムの約4倍に向上できることを確認した。さらに、熱可塑性を有するため、ガラス繊維などを添加した強化系製品への展開も可能で、高温でも剛性が高く(高温剛性:ブチルゴムの約80倍)、制振性も有する材料を実現している。
同材料は、既存の柔軟なブチルゴム系制振材料が使用されてきたパッキンやシール材などの置き換え用途で使える他、硬さも兼備可能で、各種騒音源のカバー/筐体のハウジングなど比較的大型の構造部材などへの展開も期待できる。
東レは、モビリティ関連部品をはじめ、電気電子部品や産業用機器、建築部材などの幅広い分野への展開を目指し、高制振性ナイロン樹脂の量産技術の確立を進める。
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