東レは、非破壊X線検査の高速化と稼働率向上に貢献する、高耐久な短残光シンチレータパネルを開発し2024年6月から国内外向けに発売したと発表した。
東レは2024年7月4日、非破壊X線検査の高速化と稼働率向上に貢献する、高耐久な短残光シンチレータパネルを開発し2024年6月から国内外向けに発売したと発表した。
短残光シンチレータパネルとは、X線よって励起され、蛍光(シンチレーション)発光する物質であるシンチレータの中でX線照射を停止した後に残る、発光が一定量になるまでの時間が短いシンチレータをパネル状にしたものを指す。
検査装置市場の成長、検査対象品種の拡大、インライン化による全数検査の採用といった3つの要因により、X線検査装置市場は年率約10%と高い成長が見込まれており、近年では検査数増大に対応するため、高速化のニーズが高まっている。
検査を高速化するには、製品やカメラを高速で動かし高速撮像することで1製品当たりの検査時間を短縮する必要があるが、汎用的なテルビウムドープ酸硫化ガドリニウム(GOS:Tb)蛍光体を用いたシンチレータパネルでは、搬送方向に尾を引いた不鮮明な画像になるなどの課題があった。
この解決策として、蛍光体の残光が短いプラセオジムドープ酸硫化ガドリニウム(GOS:Pr)蛍光体を採用することで画像の鮮明化が行われているが、GOS:Tb蛍光体に対し輝度が低いという問題がある。さらに、非破壊高速X線検査は24時間連続稼働で使用されるケースが多く、X線照射によるシンチレータパネルの輝度劣化が進み、X線検出器の交換サイクルが短くなる課題も存在する。
そこで、東レは独自開発した高反射率フィルムをベースフィルムに採用することでシンチレータパネルの初期輝度を最大21%向上させることに成功した。また、輝度劣化が進む原因を解明し対策することで、加速試験後の輝度では従来技術と比べ、最大30%の改善を達成した。
この高輝度化と輝度劣化を抑制する2つの技術を融合させることで、高速非破壊X線検査用の高耐久なシンチレータパネルを実現し、製品価値が顧客に認められ、販売を開始した。
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