高輝度/高耐久な短残光シンチレータパネルを発売、初期輝度を最大21%向上材料技術

東レは、非破壊X線検査の高速化と稼働率向上に貢献する、高耐久な短残光シンチレータパネルを開発し2024年6月から国内外向けに発売したと発表した。

» 2024年07月05日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 東レは2024年7月4日、非破壊X線検査の高速化と稼働率向上に貢献する、高耐久な短残光シンチレータパネルを開発し2024年6月から国内外向けに発売したと発表した。

 短残光シンチレータパネルとは、X線よって励起され、蛍光(シンチレーション)発光する物質であるシンチレータの中でX線照射を停止した後に残る、発光が一定量になるまでの時間が短いシンチレータをパネル状にしたものを指す。

従来課題の輝度劣化メカニズムを解明

 検査装置市場の成長、検査対象品種の拡大、インライン化による全数検査の採用といった3つの要因により、X線検査装置市場は年率約10%と高い成長が見込まれており、近年では検査数増大に対応するため、高速化のニーズが高まっている。

 検査を高速化するには、製品やカメラを高速で動かし高速撮像することで1製品当たりの検査時間を短縮する必要があるが、汎用的なテルビウムドープ酸硫化ガドリニウム(GOS:Tb)蛍光体を用いたシンチレータパネルでは、搬送方向に尾を引いた不鮮明な画像になるなどの課題があった。

 この解決策として、蛍光体の残光が短いプラセオジムドープ酸硫化ガドリニウム(GOS:Pr)蛍光体を採用することで画像の鮮明化が行われているが、GOS:Tb蛍光体に対し輝度が低いという問題がある。さらに、非破壊高速X線検査は24時間連続稼働で使用されるケースが多く、X線照射によるシンチレータパネルの輝度劣化が進み、X線検出器の交換サイクルが短くなる課題も存在する。

X線インライン検査の高速搬送時の撮像画像で、電子部品を搬送速度:90m/分で測定時のGOS:Tb蛍光体(左)とGOS:Pr蛍光体(右)の撮像画像。[クリックで拡大] 出所:東レ

 そこで、東レは独自開発した高反射率フィルムをベースフィルムに採用することでシンチレータパネルの初期輝度を最大21%向上させることに成功した。また、輝度劣化が進む原因を解明し対策することで、加速試験後の輝度では従来技術と比べ、最大30%の改善を達成した。

 この高輝度化と輝度劣化を抑制する2つの技術を融合させることで、高速非破壊X線検査用の高耐久なシンチレータパネルを実現し、製品価値が顧客に認められ、販売を開始した。

同社シンチレータパネルの初期輝度の比較。初期輝度は同社所有装置にて管電圧70kV/付加フィルターなし条件での測定結果で、従来技術の初期輝度を100%とした時の相対値で記載。加速試験後の輝度は同社所有装置で初期輝度測定後、60kVで累積1.1mGyをX線照射後、50日後の輝度値。両技術ともに初期輝度100%とした時の相対値で記載[クリックで拡大] 出所:東レ
同社シンチレータパネルの加速試験による輝度変化[クリックで拡大] 出所:東レ

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