東レは、イオン伝導度を従来開発品と比べ10倍に向上させた次世代電池用イオン伝導ポリマー膜を開発したと発表した。
東レは2024年3月11日、イオン伝導度を従来開発品と比べ10倍に向上させた次世代電池用イオン伝導ポリマー膜を開発したと発表した。
近年、電動モビリティの性能向上を目的に、リチウムイオン二次電池(LIB)には高エネルギー密度化が求められている。そのような中、負極として最も高い理論容量を持つ金属リチウムをLIBの負極に用いた次世代電池の開発が進められている。
しかしながら、金属リチウムは、表面の強い反応性や充放電に伴う溶解/析出形態の安定性に課題がある。特にリチウムデンドライトの成長は短絡(ショート)につながる可能性があるため、大きな課題となっている。また、固体電解質を用いる全固体電池でも、金属リチウム負極の適用には同様の課題があり、実用化には至っていない。
そこで、東レは、長年培ってきたアラミドポリマーの分子設計技術を生かして、無孔のポリマー膜中で相互作用するサイト間をリチウムイオンが飛び移り移動する「ホッピング伝導」によりイオン伝導性を有するポリマー膜の開発を進めてきた。
今回、ホッピングサイト構造の改良とサイト数を増強した新規ポリマー設計により、ホッピング伝導型のポリマー膜としては最高レベル(東レ調べ)となる、10-4S/cm台のイオン伝導度を実現した。
このポリマー膜は金属リチウム表面の保護膜として、上記課題の解消に役立つことが確認されており、金属リチウムを負極に用いた電池の寿命向上に貢献することが期待されている。
さらに、このポリマー膜をセパレーターとして搭載したリチウム空気電池では、ポリマー膜を用いた2液系リチウム空気電池として初めて(東レ調べ)、100回の充放電サイクル作動が確認されている。なお、空気電池の作動検証は三重大学 大学院工学研究科 教授の今西誠之氏との共同研究で行った。
今後、全固体電池や空気電池をはじめとする次世代電池への展開を目指し、早期の技術確立に向けて研究を加速していく。
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