大変革時代を迎える製造業。従来の縦割り、属人化したモノづくりから脱却し、全ての工程でのプロセス改革を実現するには、図面データや発注実績などの製品データを活用した部門連携が欠かせない。最終回となる連載第6回では、大変革時代を迎える製造業が目指すべき部門連携とデータ活用の姿について考える。
前回は、図面データと各部門の情報との連携による具体的な効果について、部門別に紹介しました。最終回となる今回は、大変革時代を迎える製造業が目指すべき部門連携とデータ活用の姿について考えていきます。
製造業では、製造プロセスの各段階で多くのデータが発生します。これらのデータは、バラバラの状態では活用できないため、保存して、一元管理することが必要です。実際、過去の歴史を振り返ってみても、さまざまな情報管理システムが誕生し、多くの現場に導入されてきました。埋もれてしまったままのデータから価値は生まれません。保存、管理し、活用してこそ価値が生まれます。
これまでの連載の中で、部門を越えたデータ活用により、部門間連携が強化されることを紹介してきました。また、それを阻む要因が縦割りの事業構造と業務の属人化であり、それらを解消するには、データ活用の実践(いかにしてデータを活用するか)がカギを握ると述べました。
現在、多くの製造業の企業では、製造プロセスの各段階で発生したデータを、最適なシステムにより保存、管理し、活用できる環境が整っています。その結果、紙ベースでデータを処理していた当時と比較して、業務効率が格段に向上しました。その一方で、各部門でシステムが独立し、連携していない場合も多く見られます。いわゆる“サイロ化”の状態です。
部門間連携を強化するには、このサイロ化してしまった状態を変える必要があります。既存システムに関しては、統合や刷新により、解消の方向に進むことでしょう。問題となるのは、まだシステム化に至っていないデータの扱いです。図面データがそれにあたります。図面データは、ファイルとして保存、管理はされていますが、多くの場合、活用できる形になっていないのが現状です。図面データの原本を持つ設計部門でさえも、担当したことのない案件で作製された同じ図面、類似図面を探し出すことは容易ではありません。
製造業にとって、データ活用による部門間連携を実現するには、「製造プロセス全体をつなぐ共通言語」となり得る図面データの活用が必要不可欠です。そのためには、図番や図面名から、書き込まれた手書きのメモに至るまで、図面に描かれた全ての情報をデータとして検索性良く保存、管理し、活用できるシステムが必要になります。これにより、紙の図面を出力せずとも各部門で図面を簡単に探し出せて、閲覧することが可能となります。さらに、各部門のデータと図面データを連携させていくことにより、部門間連携が加速し、図面データの価値もより一層高められるでしょう。大変革時代の製造業では、図面データは保存、管理から活用へと変わり始めています。
図面データ活用へと動き始めている製造業ですが、活用に当たってシステムを導入する前に対応しておくべきことがあります。それは、変革に対応できる体制作りです。
データ活用による部門間連携の強化を阻むものに、縦割りの事業構造と業務の属人化があると紹介しました。それらを解消するために、全社横断的にデータ活用できるシステムを導入し、構造を変革していきます。言葉で言うのは簡単ですが、実際に変革を推進するには大きな力が必要です。
現状、大きな問題がなく動いている組織では、多くの場合変化を嫌います。また、潜在的な問題にボンヤリと気づいてはいても、それが大きな負荷となっていないような現場も同様です。「何か新たなシステムを入れて業務のやり方が変わるのは困る」「そもそも現状で問題ないのだからやり方を変えたくない」といった、いわゆる抵抗勢力が大なり小なり出てくるものです。
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