日本テキサス・インスツルメンツは茨城県内の高校生を美浦工場に招き、排水を工場外に出さないクローズドシステムの取り組みを説明した。
日本テキサス・インスツルメンツは2023年8月18日、美浦工場(茨城県美浦村)に茨城県土浦市の高校生を招き、排水を工場外に出さないクローズドシステムの取り組みを説明した。
1980年に設立された美浦工場は、日本で2番目の広さを誇る湖である霞ケ浦に隣接している。霞ケ浦ではワカサギ漁などの漁業が行われている他、霞ケ浦の水は生活用水などとして利用されているため、排水基準は周辺の他水域に比べて厳しく設定されている。
一方で、半導体の製造工程では、純度が極めて高い超純水を大量に使用する。また、美浦工場ではシリコンウエハーに電子回路を作成する前工程が行われており、その過程で酸やアルカリ、有機溶剤などの薬品も使い、工場から出る工業排水にはこれら薬品の成分が含まれている。
工業排水は通常、無害化処理してから川などへ放流する。しかし、美浦工場では工業排水をリサイクルして再び工場で超純水として使用する超純水クローズドシステムを操業開始当初から導入している。薬品などの廃液は外部の業者に処理を委託しており、下水処理される工場内の食堂やトイレなどからの生活排水を除いては工場から霞ケ浦に排水を放流していない。
工業排水はまずタンクに集められ、中和、酸化、還元処理を経て、蒸発濃縮機で水と水以外の成分を分離し、再生水にする。水分が蒸発して残った濃縮液は外部の業者に処理を委託する。再生水はUV酸化槽で紫外線を照射し、オゾンを供給して有機物を分解、除去。さらに活性炭塔で有機物、残留塩素を吸着、除去する。その後、イオン成分を除去するイオン交換樹脂塔や逆浸透膜装置、真空脱気塔や限界ろ過膜装置などを経て超純水として再び工場で使用される。
美浦工場からは1日500tの工業排水が出るが、その内の業者に処理を委託する分を除いた95%を再利用している。
今回は、土浦市が市内の高校生を対象に、水環境に関する意識向上と郷土愛醸成を図る環境教育事業「高校生霞ケ浦ミーティング」の一環として行われた。
日本テキサス・インスツルメンツ 美浦工場長の芳村隆弘氏は「われわれは『私たちは社員であることを誇りに思える会社、地域の隣人として望ましい会社であることを目指します』という目標を掲げており、この工場が始まって以来、クローズドシステムを行っている。日々、設備が動く中でさまざまな問題が起こるが、総勢200人の頼もしいエンジニアが解決してくれている。彼らの話も聞きながら、楽しんでいってほしい」と呼びかけた。
その後、同社 国際資材調達部 プロフェッショナルの川口信行氏がゲームや自動車など身近な存在を通して半導体の役割や重要性を解説。同社 美浦工場 施設部 部長の冨田学氏の案内でクローズドシステムを見学した。参加した高校生の1人は「企業が霞ケ浦のためにさまざまな努力をしてくれていることが分かった。貴重な経験になった」と話した。その他、高校生からは「(設備の)投資金額は?」などの鋭い質問も出ていた。
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