3Dプリンタを用いたデジタル製造/小ロット生産では、従来のような物理的な金型ではなく、デジタルのデータそのものが資産であり、ノウハウの塊となる。それは単なる形状データだけでなく、造形時の姿勢、サポートの付け方、バッチ生産時のレイアウトの仕方、使用材料/造形プロファイルなどを含めたデータのことを意味する。これらのデータを適切かつセキュアに管理することで、同装置/同材料環境であれば、いつでもどこでも常に同じクオリティーのパーツを生産できるようになる。「データ管理/受発注管理のためのプラットフォームに関しては、2023年秋ごろのローンチを目指して開発を進めており、今回支援する中小製造業へ展開していく計画だ」(内田氏)。
また、従来の金型を用いた射出成形とは異なり、製品形状そのものを3Dプリント向けにどのように設計していくのか、造形時の姿勢やサポート材の付け方、レイアウトなど、3Dプリンタならではの設計ノウハウがあるため、金型を用いた射出成形から3Dプリント製造へのシフトに必要な作業を支援することも重要となる。
そして、中小製造業自身で試作/小ロット生産ができるようになり、さらに数千個単位、1万個単位で生産したいとったニーズが出てきた際、安心して外注できるバックアップ体制が求められる。具体的には、3Dプリント製造から品質検査、出荷納入まで行う体制の構築を目指す。その実現に向けて、新横浜のJMC本社内に、3D Systemsの「Figure 4 Modular」を導入した。
「Figure 4シリーズ」は、DLP(Digital Light Printing)方式の吊り下げ型の光造形3Dプリンタで、光硬化性の液体樹脂に対し、LEDライトによるプロジェクター光を面状に照射しながら一層ずつ硬化させ、上に引き上げていく造形方式となる。点で光を照射するSLA(Stereolithography Apparatus)方式よりも高速に造形できる。また、高耐熱や難燃性、生体適合性などを有する量産仕様のマテリアルも多数用意されており、さまざまな用途の量産パーツなどの製造に適用可能だ。
同シリーズのうち、Figure 4 Modularはビジネスの成長に合わせてプリンタの数を拡張することが可能な半自動ソリューションで、1台の中央コントローラーに対して、最大24台のプリンタ(最大造形サイズ:124.8×70.2×346mm)をつなげて運用できる。少量から中量の生産だけでなく、プリンタごとに異なる材料やジョブを流して多品種生産も行える。今回、JMS本社に導入されたFigure 4 Modularは、5台のプリンタ(+中央コントローラー1台)で構成されており、実導入として「アジア最大規模」(同プログラム)だという。ベンチマーク検証プログラムでは、こちらの設備を活用しながら中小製造業30社のデジタル製造/小ロット生産の実現に向けた支援/トライアルを進め、経験とノウハウの蓄積などを進めていく。
「3Dプリンタによるデジタル製造/小ロット生産をやってみたい、やってみようと考えている中小製造業に対して、データ制作からデジタル製造まで全てのフェーズをしっかりと支援、バックアップできる体制を提供できることに価値がある。これは3Dプリンタメーカーだけでできることではなく、それぞれに強みを持った企業同士の協力/連携があってこそ実現できるものだ」(スリーディー・システムズ・ジャパン インダストリアルソリューショングループ セールスディレクターの並木隆生氏)
さらに、ケイズデザインラボ、JMC、スリーディー・システムズ・ジャパンの3社は、「Figure 4 Standalone」(試作/小ロット生産向け)を活用したデジタル製造/小ロット生産を前提とした試作製作の流れなどを体験できるオープンハウス形式のセミナー「Figure 4によるデジタル製造向け試作」を実施(詳しくは告知ページを参照のこと)し、同プログラムの活動やデジタル製造/小ロット生産の可能性について広く発信していく。
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