製品のモジュール化(再利用性、リサイクル)の事例では、Volvo Trucks(ボルボ・トラック)の取り組みを紹介した。ボルボ・トラックではCreoとWindchillを連携させ、設計から製造までのモデルベースデジタルスレッドを構築している。また、モジュール化を推進し、増加する車両バリエーションに対して、当初1万2000点ほどあった部品の種類を、6000〜7000点にまで削減することに成功している。「車両のバリエーションを増やしながら、部品の種類を減らしていくという相反する取り組みを成し遂げられたのはモジュール化があってこそだ。サステナブルなモノづくりの観点でも、モジュール化による部品数の削減は非常に重要な取り組みだといえる」(芸林氏)。こうした取り組みによって、部品の製造コストを大幅に下げることができた他、流通やアフターサービスにおけるコスト削減にもつなげられたという。
モジュール化による車両バリエーション展開を支えているのが、製品情報も含め、エレ/メカ/ソフトの構成情報を統合的に管理できる「Windchill Smart Platforms」だ。新しい製品バリエーションに対して、モジュールや部品をどのように配置するかを動的かつ視覚的に構築でき、その結果をビュワーやCreoに引き渡すことができる。
設計の効率化(期間短縮、人の移動減)に関しては、事例ではなく、PTCからの提案として、SaaS(Software as a Service)の活用、具体的には2023年5月にリリースしたSaaS版の3D CADソリューション「Creo+」を活用したアプローチを紹介した。
PTCは、2019年11月に買収したOnshapeの技術をベースに構築したクラウド基盤「Atlas」プラットフォームを中核とするSaaS戦略を強化しており、PTCがこれまでオンプレミス環境向けに提供してきた既存ソリューションに関してもSaaS対応/Atlasプラットフォーム統合を順次進めている(同時に、PTCはオンプレミス版製品の開発も継続していく方針を掲げている)。
Creo+のコアとなるCAD機能は、オンプレミス版のCreoと同じソースコードベースで開発されており、機能の差異や操作性の違いなどなく、実績のあるCreoのパフォーマンスを存分に発揮できるという(データ変換なく相互にやりとりも可能)。また、Creo+はSaaSのメリットを生かし、離れた場所にいる設計者同士によるリアルタイムの設計コラボレーションや、クラウドベースのCAD管理機能(例:オンラインでのライセンス管理、稼働状況の確認)などを提供する。「SaaS対応したCreo(Creo+)を活用することで、設計の効率化が図れるだけでなく、出社や出張といった人の移動も削減できるようになる」(芸林氏)。
また、Webセミナーの後半では、CreoをはじめとするPTCのソリューションを活用したサステナブルなモノづくりの具体的なアプローチおよび機能説明として、PTCジャパン 製品技術事業部 副事業部長 執行役員の財前紀行氏が、ジェネレーティブデザイン、リアルタイムシミュレーションを含むシミュレーション駆動型設計、複合材のための設計、バリエーション管理について説明した他、マルチCAD環境を可能にする「Unite Technology」の紹介などが行われた。
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