PTCは、米国マサチューセッツ州ボストンで年次イベント「LiveWorx 2023」を開催した。基調講演には同社 社長 兼 最高経営責任者のジェームズ・E・ヘプルマン氏が登壇し、同社の最新の事業戦略や取り組みを紹介した。本稿では、当日の講演内容を抜粋して紹介する。
PTCは2023年5月15〜18日(現地時間)、米国マサチューセッツ州ボストンで年次イベント「LiveWorx 2023」を開催した。基調講演(5月16日、現地時間)には同社 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏が登壇し、同社の最新の事業戦略や取り組みを紹介した。本稿では、当日の講演内容を抜粋して紹介する。
基調講演の冒頭でヘプルマン氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によってLiveWorxのリアル開催が2019年以来4年振りとなったことに触れた。その上で、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の在り方が、2019年当時から変化していると指摘する。
「2019年頃のDXの取り組みは似たものが多かった。当時のDXは、企業が低コストかつ高品質な製品を、より早く市場に投入できるようにすることを意味していた。しかし現在、企業は製品をよりインテリジェントにするとともに、工場の効率性を高め、強靭なサプライチェーンを構築し、サステナビリティやコンプライアンスに適合することも求められるている。DXの実現がそれら全ての鍵を握るようになった」(へプルマン氏)
こうした変化への対応としてPTCは、アプリケーションライフサイクル管理(ALM)ソフトウェア「Codebeamer」の獲得や、フィールドサービス管理ソリューションを提供するServiceMaxの買収を通じて、企業のDXをより効果的に支援できるようにしてきた。さらに、3D CADソリューション「Creo」やPLMソリューション「Windchill」などをはじめとする同社のコアビジネスを構成する商品、ソリューションの強化にも取り組んでいる。特にWindchillによりPTCのPLM分野は大きく成長している状況にあるという。
へプルマン氏はソフトウェア開発におけるアジャイルな体制の構築について、その重要性にも言及した。製造業のようにこれまでハードウェア製造を主に手掛けていた業界でも、製品へのソフトウェア搭載を通じてUX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させる重要性が増している。組み込みソフトウェアを介したIoT(モノのインターネット)接続によって、製品の継続的なモニタリングや遠隔制御などが可能になるからだ。
しかし、ソフトウェアは一度開発すれば終わりではなく、アップデートを通じて品質を向上させていく必要がある。このためにはALMが重要になるが、PTCではCodebeamerの獲得を通じて企業支援に必要な能力を既に備えている。加えて、「PLM分野でのソリューションを組み合わせることで、製品のソフトウェアとハードウェアについて、両要素を効果的に管理できるようになる」(へプルマン氏)とした。
へプルマン氏はALMとPLMの連携に取り組む企業の事例として、空気圧機器など工場向けのプロセスオートメーション機器やシステムを展開するドイツのフェスト(Festo)を紹介した。Festoは同社の顧客企業からの要求に対して、製品に搭載したソフトウェアを迅速に修正することで対応している。しかし、要求への対応をアジャイルに進めていくと、開発すべきソフトウェアの数が膨大なものとなり、その管理手法が課題になる。
そこでフェストはCodebeamerを活用することで、ソフトウェアの要件定義から設計、実装、テストに至るまでの開発プロセス全体のトレーサビリティーを確保できる体制を整えた。同社の担当者は「アジャイル開発においてはツールセットが重要だ。適切なツールセットなしでスクラムを組んでもうまくいかない」とコメントしている。
また、これに関連してへプルマン氏は、アジャイル開発はソフトウェア開発だけでなく、ハードウェア開発においても重要な概念だと指摘する。また、PTCでもクラウドネイティブの製品開発ソリューションである「Onshape」とPLMソリューション「Arena」などの担当チームが、アジャイルプログラムマネジメントに通じたCodebeamerの担当チームと連携しつつ、ハードウェアのアジャイル開発に関する顧客要望に応える体制を整えていると語った。
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