最も大きな注目を集めるワードの1つである「生成AI」。製造業ではどのように役立てられるのだろうか。活用事例を幾つか取り上げるとともに、製造現場などでの活用事例を探る。
「生成AI」は今、最も大きな注目を集めるワードの1つだ。OpenAIによるChatGPTの公開は、AI(人工知能)による高精度のコンテンツ生成がもう一定程度可能なのだということを知らしめ、多くの人々に衝撃を与えた。
その衝撃は産業界にも届いている。現在、製造業でも大規模言語モデル(LLM)や画像生成AIの業務適用を検討する企業が増えてきている。もっとも、それらの動きの多くはあくまで初期段階や業務の一部での試験的な導入にとどまる。組織や業務プロセス、働き方の在り方そのものを変え得るような事例はまだ出てきていない。
だが今後は、生成AIをいかにモノづくりに生かしていくかが、製造業において非常に重要になることは間違いない。実際にどう役立てられるのか。他社がどのような取り組みに着手しているのかを知っておくことには価値がある。ここではMONOistで過去に取り上げた記事から、特にChatGPTのようなLLMをベースとする対話型AI(以下、単に対話型AIと表記)の活用事例を幾つか取り上げて、製造現場などでの活用可能性を少し紹介していきたい。
製造現場でのChatGPT活用に取り組んでいるのが、自動車向け金属加工部品を手掛ける旭鉄工だ。同社が持つ工場の現場改善活動のためのIoT(モノのインターネット)システムを外部展開するグループ企業、i Smart Technologiesと共同で取り組みを進めている。
旭鉄工は、社内に蓄積された改善活動の事例集を効率的に検索するためのインタフェースとしてChatGPTの活用を検討中だ。同社は自社の過去の現場改善事例を「横展アイテムリスト」というノウハウ集に集約している。各事例には、その事例がもたらす改善効果によって振り分けた「上位概念」というインデックスを付与しており、検索効率を高める工夫がなされている。ノウハウを蓄積するだけでなく、活用する際の利便性を考えた仕組みだ。
しかしこうした仕組みがあっても、蓄積した事例が膨大になると検索目的に合致した事例を探すことは難しくなる。この解決策として旭鉄工が注目したのがChatGPTだ。横展アイテムリストを読み込ませておけば、自然言語で問いかけるだけで、目的に合致し得る上位概念や事例が簡単に検索できるようになる。
現時点でChatGPTの回答は安定しておらず、間違いもある。ただ、そもそも横展アイテムリストは単なるノウハウ集というより、検索を通じて改善活動の発想を呼び起こすことを目指している。このため、回答に多少のブレがあってもあまり問題にはならないのだとする。
ChatGPTによる独自の改善事例の「まとめ方」が作業者に異なる角度からのヒントを与える可能性もある。例えば、ChatGPTは読み込ませたデータには存在していない、「(事例の)注意点」も独自に作成して回答する。旭鉄工はこうしたChatGPTの働きを、人間の想像力の幅を広げるツールとして期待しているようだ。
現時点では横展アイテムリストの全事例をChatGPTに連携することはかなっておらず、製造現場への本格導入には至っていない。この課題を解消次第、i Smart Technologiesが外部提供するソリューションに「カイゼンGAI(Generative AI)」として組み込む計画だという。
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