ChatGPTに代表される生成AI(人工知能)に大きな注目が集まっている。その中でいち早く製造現場の改善活動の支援ツールとして活用を進めようとしているのが、中堅自動車部品メーカーである旭鉄工とその改善の成果を外部に展開するIoTサービス企業のi Smart Technologiesである。両社の取り組みを紹介する。
ChatGPTに代表される生成AI(人工知能)に大きな注目が集まっているが、製造現場ではどのような使い方が考えられるだろうか――。
こうした中でいち早く製造現場の改善活動の支援ツールとして活用を進めようとしているのが、中堅自動車部品メーカーである旭鉄工とその改善の成果を外部に展開するIoTサービス企業のi Smart Technologiesである。両社の取り組みを紹介する。
旭鉄工は愛知県で自動車の金属加工部品を製造する中堅メーカーだ。その中で工場の改善活動としてIoT(モノのインターネット)を活用したシステムを自社開発し、大きな成果を得られたことから外部にこれらを展開する企業としてi Smart Technologiesを設立した。両社ではIoTを含めた先進的なデジタル技術の活用を積極的に推進しており、旭鉄工ではi Smart Technologiesが展開する現場見える化ツール「iXacs(アイザックス)」を活用し、2015年度比で年間約4億円の労務費削減を実現している。加えて、電力消費量についても見える化を進めており、2013年度比で26%削減につなげてきた。
旭鉄工とi Smart Technologiesの両社の代表取締役社長である木村哲也氏は製造現場でIoTを活用する意義として「最終的には経営価値につなげることが全ての改善活動の目的だ。その視点で考えた場合、改善活動により何をやるのかということが最も重要で、そのために付随する作業は価値を生むわけではない。こうした作業の負荷を取り除いていくことが重要だ。IoTなどデジタル技術を活用することで改善活動で生まれる実際の作業内容そのものが大きく変わるわけではないが、改善のスピードは一桁クラスで早くなる。サイクルを早められるからこそ大きな差を生むことになる」と語る。
ただ、IoT活用で活動のサイクルそのものは早まったものの、改善方法そのものは属人的に管理されており、個人が紙やファイルで保存している状況だった。既に実績のある改善パターンなども共有された状態ではなかった。そこで、旭鉄工ではこの改善のノウハウを共有し、問題の対策の早期化と人材育成の早期化を目指した。そのためにノウハウを抽出して作成したのが「横展アイテムリスト(ノウハウ集)」だ。
改善活動は現場で実際に働く人々の気付きなどに基づく生きた業務プロセスの改善を行える点が肝だ。各現場で最適な改善内容を構築するため、改善活動を単にリスト化しても、他の現場でそのまま生かせることは少ない。しかし、そこで使った考え方や工夫の方法などは活用できる。そこで旭鉄工ではこの横展アイテムリストの作成時に、索引的に使えるようにどういう発想で改善を行ったかを示す「上位概念」を設定。この上位概念をベースに改善のアイデアを出す一方で、具体例を確認できるようにした。
上位概念として設定したのは「要らなくする(そもそもその活動が必要かを検討する)」「待ちを短く」「同時に行う」「距離を短く」「付帯作業をなくす」「気遣いをなくす(不要な工程間配慮など)」「速度を上げる」「管理をしっかり」「チョコ停をなくす」の9つだ。「頭文字をとって『今時不起訴勝ち(いまどきふきそがち)』として社内では覚えてもらい、改善活動のアイデア出しで活用している。こうした改善の視点が共通認識化されることで、従来は気付かずに放置されていた無駄に気付けるようになる。上位概念が考えるヒントになればよい」と木村氏は考えを述べる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.