勉強した方がトクなのは分かるけど、なんだか難しそうでつい敬遠してしまう「経済」の話。モノづくりに関わる人が知っておきたい経済の仕組みについて、小川さん、古川さんと一緒にやさしく、詳しく学んでいきましょう!
小川さん:学生時代アメフトで鍛えた、体育会系機械エンジニア&金属加工職人。経済統計に興味があり、趣味で統計データを共有する情報発信を続けている。ラーメン好き(現役時代よりも体重が増えていることは家族に内緒)。
経済構造に詳しい古川さん: 元エリート銀行マンで、現在は起業しスタートアップの事業支援など、製造業を中心としたエコシステムの構築を進めている。大学の非常勤講師や、地域経済活性化のための委員なども務める。実は照れ屋。
(※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
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古川さん、前回は経済活動別の国内総生産について教えていただいてありがとうございました。
皆さんの仕事が付加価値として経済活動別に集計され、それらを合計すると国内総生産(GDP)になるという事でしたね。これがSNA(国民経済計算)の(1)生産勘定という部分でした。
経済活動別に見ることで、私たちの仕事も経済全体の一部として貢献しているんだな、と実感が湧きました。中でも製造業は労働者数も多く、生産性の高い重要な産業ということでしたね。
はい、前回見ていただいたように、主要国の一般的な傾向として製造業(≒工業)の国内総生産は今も成長し続けています(労働者数は減少傾向)。ただ、その中で日本の製造業だけ、国内総生産も縮小傾向にあることが少し気掛かりです。
苦しいところですが、日本の製造業の奮起に期待したいですね。
さて、今回のテーマは稼いだ付加価値がそれぞれの経済主体にどのように分配されていくのか、です。早速解説していきましょう。
今回見ていくのは、SNAの(2)所得の分配勘定という部分ですね。
これは生産に貢献した人への分配を表しています。企業が得た付加価値から、労働力を提供した労働者に雇用者報酬を支払い、さらに、生産に伴って発生した税金や受け取った補助金などを足し引きします。その残りが営業余剰・混合所得(総)として資本を提供した企業部門の手元に残る、という考え方です。
私たち労働者のお給料は、付加価値から分配されていると考えるわけですね!
その通りですね。下表に所得の分類をまとめましたので、参考にしてみてください。
生み出した付加価値がどのように分配されているか、とてもよく分かりますね。
付加価値をどのように分配するかは、国の在り方や経済の構造、各産業分野の特徴が反映されるところです。労働者、企業、政府間のバランスをいかに取るか。これは、社会経済における重要なテーマとなっています。
なるほど。ところで営業余剰・混合所得(総)の「(総)」とは何でしょうか?付加価値(総)の部分でも気にはなっていたのですか……。
この場合、(総)は固定資本減耗を含んだ数値だということを意味しています。固定資本減耗とは、建物や機械/設備などの固定資産が劣化したり、破損/損傷したりして減少した価値のことです。
つまり、企業活動で言えば減価償却費に相当する概念ですかね?
おっしゃる通りです。ただし、減価償却費は簿価で計算されますが、固定資本減耗は時価で評価されるなど、やや異なるところもあります。固定資本減耗を差し引いた項目は、付加価値(純)、営業余剰・混合所得(純)と表記されます。英語だと、(総)はGross、(純)はNetです。
そうすると、営業余剰・混合所得(純)は損益計算書で言うところの営業利益に近いモノと考えればよいですかね?
そうですね、ざっくりとそういう理解で大丈夫だと思います。
なるほど、よく分かりました!
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