「製造業」の立ち位置はどう変化した? データで読む先進国の産業構造転換イチから分かる! 楽しく学ぶ経済の話(2)(1/5 ページ)

勉強した方がトクなのは分かるけど、なんだか難しそうでつい敬遠してしまう「経済」の話。モノづくりに関わる人が知っておきたい経済の仕組みについて、小川さん、古川さんと一緒にやさしく、詳しく学んでいきましょう!

» 2023年07月12日 06時00分 公開

小川さん:学生時代アメフトで鍛えた、体育会系機械エンジニア&金属加工職人。経済統計に興味があり、趣味で統計データを共有する情報発信を続けている。ラーメン好き(現役時代よりも体重が増えていることは家族に内緒)。


経済構造に詳しい古川さん: 元エリート銀行マンで、現在は起業しスタートアップの事業支援など、製造業を中心としたエコシステムの構築を進めている。大学の非常勤講師や、地域経済活性化のための委員なども務める。実は照れ屋。


(※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。

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「経済活動」って何だろう?

古川さん、前回は経済構造の体系と、その第一歩としての付加価値創出について教えていただきありがとうございました!


ご参考になったのならうれしいです。これからさらに経済活動のフローに沿って経済構造を解説していきますので、その都度全体の中の位置付けを下図のフローで確認しましょう。


図1:SNAの体系図[クリックして拡大] 出所:小川製作所

前回は、最上段の(1)生産勘定についてのお話でしたね。


図2:生産勘定について[クリックして拡大] 出所:小川製作所

はい。国内で生産された付加価値の合計値である、国内総生産(GDP)を解説しました。


ところで、国内総生産は経済活動別に集計されているとおっしゃいましたね。SNAでは具体的にどのように分けられているのでしょうか?


では、今回は経済活動がどのように分けられているのかを確認してみましょうか。


産業の分類の仕方を比べてみよう

SNAでは、国際標準産業分類(ISIC REV4)という分類方法にのっとって経済活動を区分しています。国民経済計算(JSNA)でもできる限り準拠した形でまとめているようですよ。


また、このシリーズで紹介していく経済協力開発機構(OECD)のデータも、ISIC REV.4にのっとった分類を採用しています。次の表を見てください。ISIC REV.4、JSNA、そしてOECDの分類をまとめてみました。


表1:経済活動・産業分類
JSNA(国民経済計算) ISIC REV.4(国際標準産業分類) OECD(本記事での日本語表記)
1.農林水産業 A.農林漁業 農林水産業
2.鉱業
3.製造業
4.電気・ガス・水道・廃棄物処理業
B.鉱業および採石業
C.製造業
D.電気、ガス、蒸気及び空調供給業
E.水供給業、下水処理ならびに廃棄物処理及び浄化活動
工業
5.建設業 F.建設業 建設業
6.卸売・小売業 G.卸売・小売業;自動車・オートバイ修理業 一般サービス業
7.運輸・郵便業 H.運輸・保管業 一般サービス業
8.宿泊・飲食サービス業 I.宿泊・飲食業 一般サービス業
9.情報通信業 J.情報通信業 情報通信業
10.金融・保険業 K.金融・保険業 金融・保険業
11.不動産業 L.不動産業 不動産業
12.専門・科学技術、業務支援サービス業 M.専門、科学および技術サービス業
N.管理・支援サービス業
専門サービス業
13.公務
14.教育
15.保健衛生・社会事業
O.公務及び国防、強制社会保障事業
P.教育
Q.保健衛生及び社会事業
公務・教育・保健
16.その他のサービス R.芸術、娯楽、レクリエーション業 その他サービス業

なじみのある分類名もありますが、名前からはあまり分野がイメージできないようなものもあります。


確かに、専門・科学技術、業務支援サービス業や、保健衛生・社会事業などは、具体的な仕事のイメージがしにくい名称だと思います。専門・科学技術、業務支援サービス業は、コンサルタントや専門職などの他に、職業紹介業や事業支援サービス業なども含んでいます。本編の最後に付録として詳細を記述しておきますので、そちらも参照してみてください。


日本の分類は、国際標準産業分類とほとんど変わらないですね。一方で、OECDの統計区分はざっくりとまとめている感じです。


製造業だけに着目しても違いがありますね! 国際産業分類や国民経済計算では製造業は独立した区分です。でも、OECDの統計分類では工業を構成する要素の1つということになっています。


はい、ただし工業のうち製造業が大半を占めますので、工業≒製造業と読み替えてもらっても差し支えないと思います。


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