OECDの統計データを基に、各国の産業別の国内総生産と労働者数の推移をご紹介しましょう。
日本(上段)と米国(中段)、ドイツ(下段)の、産業ごとの国内総生産(左)と労働者数(右)の比較ですね。これを見ると、各国の違いが一目瞭然ですね!
はい、産業の変化が時系列で良く分かりますね。日本は工業(赤)の国内総生産が目減りしていますが、米国、ドイツは成長が続いています。特にドイツは、他の産業よりも工業の規模が大きく、かつ順調に拡大しているようです。
労働者数で見ると、長期的には各国とも工業の労働者数が減少していますね。近年ではどの国もやや持ち直しているように見受けられます。
米国は公共性の高い公務・教育・保健(緑)の国内総生産がかなり高水準です。労働者数も各産業の中で最も多くなっています。
ドイツも工業に次いで公務・教育・保健が大きな規模を示しています。専門サービス業(紫)についても各国とも増加傾向が続いていますね。続いて産業構造の違いを、産業別の国内総生産と労働者数のシェアで比較してみましょうか。
産業別国内総生産(上段)と労働者数のシェア(下段)ですね。それぞれの国の経済がどのような構成になっているのかが良く分かります!
まず日本を見てみると、工業(赤)は国内総生産の23.6%、労働者数の16.7%のシェアとなります。これはドイツと比較的近い状況ですね。
米国や英国、フランスでは工業のシェアはかなり小さいようです。国内総生産で15%弱、労働者数では10%前後ですね。
一方で、これらの国々では公務・教育・保健(緑)の存在感が大きいようです。特に労働者数では、ドイツやカナダも含めて約25%以上のシェアですね。日本は増えているといっても18.5%にとどまります。
ドイツや韓国以外では、工業の存在感がかなり低下していて、その代わり公共性の高い産業にシフトしているという事ですね。とても意外な変化でした。
そうですね! このように統計データというファクトを確認すると、意外な発見があります。とてもワクワクしますね。
今回はひとまず、ここまでとしておきましょう。国内総生産や労働者数は、産業別に集計されていて、その中身を見てみると製造業や建設業からサービス業、特に公共性の高い産業への変化が進んでいることが読み取れましたね。次回は、稼いだ付加価値の所得として分配される部分をご紹介します。
ありがとうございます! 製造業の重要さや現在の状況が良く理解できました。次回もよろしくお願いいたします!!
OECDの統計データや、内閣府の国民経済計算は、国際標準産業分類(International Standard Industrial Classification of All Economic Activities) Revision.4に基づいて集計されています。
参照元サイト:国際連合統計部
日本語翻訳参考資料:全経済活動に関する国際標準産業分類 第4次改定版
大分類 | 中分類 | 注記・詳細分類例 |
---|---|---|
A 農林漁業 (Agriculture, forestry and fishing) |
01 作物・動物生産、狩猟及び関連サービス活動 02 林業及び伐採業 03 漁業及び養殖業 |
|
B 鉱業及び採石業 (Mining and quarrying) |
05 石炭・亜炭鉱業 06 原油及び天然ガス採取業 07 金属鉱業 08 その他の工業及び採石業 09 鉱業支援サービス業 |
|
C 製造業 (Manufacturing) |
10 食料品製造業 11 飲料製造業 12 たばこ製造業 13 織物製造業 14 衣服製造業 15 皮革及び関連製品製造業 16 材木、木製品及びコルク製品製造業 17 紙及び紙製品製造業 18 印刷業及び記録媒体複製業 19 コークス及び精製石油製品製造業 20 化学品及び化学製品製造業 21 基礎医薬品及び医薬調合品製造業 22 ゴム及びプラスチック製品製造業 23 その他の非金属鉱物製品製造業 24 第一次金属製造業 25 金属製品製造業 26 コンピュータ、電子製品、光学製品製造業 27 電気機器製造業 28 他に分類されない機械器具製造業 29 自動車、トレーラ及びセミトレーラ製造業 30 その他の輸送用機械器具製造業 31 家具製造業 32 その他製造業 33 機械器具修理・設置業 |
16 家具を除く 23 ガラスおよびガラス製品製造業 他 25 機械器具を除く 26 通信装置製造業 他 電動機、発電機、電池 他 28 エンジンおよびタービン製造業 他 30 船舶、鉄道、航空機 他 32 楽器、スポーツ用品、ゲーム 他 |
D 電気、ガス、蒸気及び空調供給業 (Electricity, gas, steam and air conditioning supply) |
34 電気、ガス、蒸気及び空調供給業 | 34 発電・送電・配電業 他 |
E 水供給業、下水処理ならびに廃棄物管理及び浄化活動 (Water supply; sewerage, sewerage management and remediation activities) |
36 水収集・処理・供給業 37 下水処理 38 廃棄物収集・処理・処分活動、材料再生業 39 浄化活動及びその他の廃棄物管理業務 |
|
F 建設業(Construction) | 41 建築工事業 42 土木工事業 43 専門工事業 |
43 解体・用地整備 他 |
G 卸売・小売業、自動車・オートバイ修理業 (Wholesale and retail trade; repair of motor vehicles and motorcycles) |
45 自動車・オートバイ卸売・小売業及び修理業 46 卸売業 47 小売業 |
46 自動車およびオートバイを除く 47 自動車およびオートバイを除く |
H 運輸・保管業(Transportation and storage) | 49 陸運業及びパイプライン輸送業 50 海運業 51 航空運送業 52 倉庫業及び運輸支援活動 53 郵便・急送宅配業 |
|
I 宿泊・飲食業 (Accommodation and food service activities) |
55 宿泊業 56 飲食業 |
|
J 情報通信業 (Information and communication) |
58 出版業 59 映画、ビデオ及びテレビ番組制作、音声録音及び音楽出版業 60 番組編成・放送業 61 通信業 62 コンピュータ・プログラミング・コンサルタント及び関連業 63 情報サービス業 |
63 データ処理、通信社 他 |
K 金融・保険業 (Financial and insurance activities) |
64 金融サービス業 65 保険・再保険・年金基金業 66 補助的金融サービス業及び保険業 |
64 保険・年金基金業を除く 65 強制社会保障を除く 66 証券・商品契約仲買業 他 |
L 不動産業 (Real estate activities) |
68 不動産業 | |
M 専門、科学及び技術サービス業(Professional, scientific and technical activities) | 69 法律および会計サービス業 70 本社、経営コンサルタント業 71 建築・エンジニアリング業及び技術試験・分析業 72 科学研究・開発業 73 広告・市場調査業 74 その他の専門、科学及び技術サービス業 75 獣医業 |
|
N 管理・支援サービス業 (Administrative and support service activities) |
77 物品賃貸・リース業 78 職業紹介業 79 旅行代理店業、旅行業、予約サービス業及び関連活動 80 警備・調査業 81 建物・景観サービス業 82 事務管理、事務支援及びその他の事業支援サービス業 |
78 職業斡旋所、臨時労働者派遣業 他 81 清掃業、景観手入れ 他 82 会議・見本市運営業、コースセンター 他 |
O 公務及び国防、強制社会保障事業 (Public administration and defense; compulsory social security) |
84 公務及び国防、強制社会保障事業 | |
P 教育(Education) | 85 教育 | |
Q 保健衛生及び社会事業 (Human health and social work activities) |
86 保健衛生事業 87 居住ケアサービス業 88 宿泊施設のない社会事業 |
86 病院事業 他 87 居住介護施設 他 |
R 芸術、娯楽、レクリエーション業 (Arts, entertainment and recreation) |
90 創造的活動、芸術・娯楽活動 91 図書館、公文書館、博物館及びその他の文化活動 92 ギャンブル及び賭け事事業 93 スポーツ及び娯楽・レクリエーション活動 |
93 遊園地・テーマパーク 他 |
S その他のサービス業 (Other service activities) |
94 会員制団体 95 コンピュータ及び個人・家庭用品修理業 96 その他の個人向けサービス業 |
94 職業団体、労働団体、政治団体 他 96 クリーニング、理容、葬儀 他 |
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⇒連載「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら
⇒連載「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」はこちら
小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
古川拓(ふるかわ たく)
TOKYO町工場HUB 代表
京都大学法学部卒。バンカーとして日米で通算15年間勤めたのち、2004年に独立。技術と創造力で社会課題の解決を促すソーシャルデザイン/プロデュースの道を進む。自ら起業家として活動しつつ、ベンチャーファンドの取締役、財団理事等を歴任し、国内外で活動してきた。
2017年よりスタートアップのエコシステム構築を目指すTOKYO町工場HUBの事業を開始。さらに2022年より和文化(工芸、芸能、食文化)を海外向けにプロデュースするTokyo Heritage Partnersを立ち上げ、現在に至る。
2009年〜2020年:東京大学大学院新領域創成学科の非常勤講師(持続可能な社会のためのビジネスとファイナス)を務めた。現在、東京都足立区の経済活性化会議他、東京観光財団エキスパート(ものづくり分野担当)、各種審議委員会の委員を務める。
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