パナソニック コネクトのプロセスオートメーション事業部は、インバーター制御の直流アーク溶接機「YD-250/300/500DS2」を2023年3月1日に発売したことを皮切りに、交流アーク溶接機から直流アーク溶接機への置き換えを進めている。
パナソニック コネクトのプロセスオートメーション事業部は2023年4月19日、オンラインで会見を開き、熱加工システム事業の新製品として同年3月1日に発売したインバーター制御の直流アーク溶接機「YD-250/300/500DS2」の概要を説明した。
今回の新製品発売を機に、交流アーク溶接機から直流アーク溶接機への段階的な置き換えを進めていくという。直流アーク溶接機への置き換えを提案し、交流アーク溶接機の受注終了(ラストオーダー)は2023年9月末で、生産終了は2024年3月末を予定している。生産終了は、ラストオーダーの生産が終了した時点になり、早まる可能性もある。パナソニックブランドで販売した交流アーク溶接機については、引き続きサービスを提供する。
YD-250/300/500DS2は、被覆アーク溶接法で、「高い安全性能」「優れた省エネ性能」「抜群の溶接性能」を実現する最新機種だという。
安全性能については、オプションの起動スイッチ「トーチスイッチ」をプッシュ後、待機電圧の出力を行い、溶接が終了すると、自動で出力を完全停止する新機能を備えている。溶接棒と母材間の出力電圧を安全な値に減少させる「電撃防止機能」や電撃防止機能の動作状態を確かめられる「電防点検機能」、出力端子への接触を防ぐ「出力端子カバー」といった従来機「DS1」シリーズの機能も継承している。
省エネ性能では、最新のインバーター制御回路を搭載し、従来型の交流アーク溶接機と比べ、消費電力を約27%減らせる。待機時にも省エネ回路が作動するため節電が可能。これにより、従来型の交流アーク溶接機と比べ、毎月の電気料金を1万5000円減らせ、CO2排出量を0.41t(トン)削減できる。
溶接性能に関しては、ソフトでスパッタが少ないアーク特性を実現している他、アーク特性を任意に変えられる。接続した延長ケーブルの長さが往復100mでも、溶接電流のドロップが少なく、常に安定した溶接が行える。
オプションとして用意している遠隔電流調整機能「アークトロン」は溶接機から離れた場所でも手元で溶接電流の調整が可能だ。
パナソニック コネクト プロセスオートメーション事業部 熱加工システム事業 事業総括の池谷啓司氏は、「古くから鉄鋼材料を中心として接合に使用されてきた被覆アーク溶接法には、交流アーク溶接機と直流アーク溶接機が使用されている。日本では交流アーク溶接機を使用するケースが多数だが、グローバルでは直流アーク溶接機を利用することの方が多い。交流アーク溶接機は、直流アーク溶接機に比べ、待機中の消費電力が大きいなど、環境負荷が大きい溶接機だ。そこで、当社は、交流アーク溶接機から直流アーク溶接機への置き換えに踏み切った」と話す。
同社の熱加工システム事業は1957年にコンデンサーを用いる省エネの溶接機を生産したことが起点になる。その後、世界で初めてトランジスタインバータ制御方式を採用した「CO2/MAG 溶接機」を開発するなど、エネルギーの効率的な活用を目指した商品づくりを行ってきた。商品の省エネ化や工場でのCO2排出量削減、新技術/新工法による排出量低減などにも取り組んでいる。
2022年1月には、パナソニックグループが、新たな環境コンセプトである「Panasonic GREENIMPACT(パナソニック グリーンインパクト)」を発信したことを考慮し、熱加工システム事業でも、このコンセプト実現に向けて検討した。その結果、被覆アーク溶接法については、直流アーク溶接機の新製品発売のタイミングで、環境負荷が低い直流アーク溶接機への置き換えを推進するに至った。
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