インタビュー
» 2022年09月15日 06時30分 公開

パナソニック コネクト樋口氏が語る、溶接機を開発していたあの頃製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

パナソニック コネクトは2022年9月6日、過去に開発し販売していた溶接機2機種が、国立科学博物館の「令和4年度 重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に認定されたと発表した。今回認定された2機種の内の1機種は、現在パナソニック コネクトを率いる代表取締役 執行役員 社長・CEOの樋口泰行氏が新卒で配属された際に開発に携わった製品だという。認定に当たり、樋口氏に当時の苦労や思い、モノづくりへの考えなどについて聞いた。

[三島一孝MONOist]

 パナソニック コネクトは2022年9月6日、過去に開発し販売していた溶接機2機種が、国立科学博物館の「令和4年度 重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に認定されたと発表した。

 未来技術資産とは、国立科学博物館(産業技術史資料情報センター)が、日本の科学技術史資料で「科学技術の発達上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つもの」や「国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えたもの」に該当する資料を選定し、重要科学技術史として資料台帳に登録するものだ。2008年度から毎年行われており、合計343件が登録されている。

 今回認定されたパナソニック コネクトの製品は、1985年発売のトランジスタインバータ制御CO2/MAG溶接機「YD-350HF」と、2000年発売のフルデジタル直流TIG溶接機「YC-300BM1」である。

photo 未来技術資産として認定を受けた「YD-350HF」 出所:パナソニック コネクト

 「YD-350HF」は、トランジスタインバータ制御方式を採用したCO2/MAG溶接機で、溶接電流波形を高速で制御することにより、アークスタート性能を大幅に向上させた。また、シールドガスに活性ガスを用いる炭酸ガスアーク溶接(CO2溶接)における課題だった多量で大粒のスパッタの低減を実現。自動車部品などの溶接現場における生産性向上に貢献した。未来技術資産としても「自動車業界を中心とする薄板溶接の高品位化への要求に応えるインバータ制御方式が普及する端緒となった溶接機として重要」と評価されている。

 「YC-300BM1」は、最初期のフルデジタル設定/制御方式の溶接機だ。従来主流だったアナログ方式では最適な溶接状況の設定条件の再現性が低い課題があった。そこで、設定と制御にフルデジタル方式を採用することで、溶接施工条件を正確かつ詳細に再現することを可能とし、溶接品質の高位安定化に貢献した。今では国内外の多くの溶接機メーカーがフルデジタル方式を採用しており「CPUを用いた高速制御による溶接の高性能化と合わせて溶接機にフルデジタル化の流れを創出した製品として重要」と未来技術資産でも評価を受けた。

 今回認定された2機種の内、「YD-350HF」は現在パナソニック コネクトを率いる代表取締役 執行役員 社長・CEOの樋口泰行氏が開発に携わった製品だという。認定に当たり、樋口氏に当時の苦労や思い、モノづくりへの考えなどについて聞いた。

巡り巡って開発製品の評価を直接受けることに

photo 受賞式の様子[クリックで拡大] 出所:パナソニック コネクト

MONOist 携われていた製品が未来技術資産に選ばれたことに対する率直な感想はいかがですか。

樋口氏 仕事関連であまり感情をあらわにしすぎてはいけないと律してきた部分があったが、今回の件はとにかくうれしく、喜びをあらわにしている。これらの製品の資料や機器を保存し、溶接機自体の進化を推し進めてきてくれた事業部に感謝したい。

MONOist 開発されていた当時のことを振り返っていただけますか。

樋口氏 関西に生まれ、工学部電気工学科を出て、エンジニアを志した際に、パナソニックに就職したのは当たり前のような流れだった。当時は家電が非常に強い時代だったが、配属された先が溶接機で少し落胆したのを覚えている。ただ、右も左も分からない中だったが「1つのところで何かを成し遂げられないのであれば他でも駄目だ」と考えて、とにかく懸命に働いた。

 溶接機は当時から技術的に成熟しているという印象があったが、今回未来技術資産に選ばれたように、インバーターの採用やフルデジタル化などの新たな材料はあった。これらをとことん勉強して、それをすぐに開発の現場で生かすことができるなど、やりがいは非常に大きかった。「YD-350HF」の開発は主に3人のチームで行っていたが、新入社員でありながら心臓部の開発などにも深く携わらせてもらい、大きな経験となった。苦労はしたが、思い入れも非常に強い製品だ。

 私はその後、1度パナソニックを離れ25年を経て戻り、パナソニック コネクトの社長を務めているが(※)、新卒当時の部門をあらためて率いることになったことにも感慨を覚えた。その上でさらに、設計に携わった製品が、未来技術資産のような形で評価を受けたことに奇跡的なものを感じている。人生の中で大切な贈り物をもらったような感覚だ。

(※)樋口氏は1980年にパナソニック(旧松下電器産業)に入社して12年間を過ごした後、ボストン・コンサルティングやアップル、日本ヒューレットパッカード(HP)、ダイエーなどを経て、日本マイクロソフトの社長を10年務めた。その後2017年4月にパナソニックに復帰しパナソニック コネクト(当時はパナソニック コネクティッドソリューションズ社)の社長を務めている

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