これらの仕組みを生かしつつ、直近はカーボンニュートラルへの取り組みを強化する。「2022年春のIVIシンポジウムではモノづくりの根幹にカーボンニュートラル化が位置付けられるようになると訴えた」(西岡氏)。ホワイトペーパーの公開、カーボンフットプリント(CFP)体験アプリの開発と提供、カーボンニュートラル支援サーバの運用、実証実験のサポート、外部団体や海外団体との連携などを推進してきた。「モノづくりを行えば、どうしてもCO2は発生する。日本政府は2050年のカーボンニュートラル化を宣言しているが、モノづくり全体で総合的に前向きに成長する機会として捉えられる形で進めていかなければ不可能だ」と西岡氏は重要性について語る。
モノづくり全体でカーボンニュートラル化を進めていくためには、まずはカーボンフットプリントを算出できないといけないが、算出そのものが難しいという課題もある。「算出が難しい理由として、まずは個々の企業においてコストや労力の問題で運用ができないということがある。次に企業や業界で差異が大きくルール化や共通化が難しいという点がある。そして、これらのデータを共有して活用するのに社外開示が難しいという問題がある」と課題について西岡氏は指摘する。
これらをクリアした「カーボンチェーンネットワークエコシステム」を実現するには「共通化された簡便な計算モデル」「フロー差分値によるインセンティブ」「データを仲介するプラットフォーム」「ゆるやかな標準辞書によるPCR」「データ取引によるエビデンス管理」などの仕組みが必要になる。
具体的に実践を含めて「CFP計算フロー」の構築を進めるなど、カーボンニュートラル化に向けた4種類のサービスカテゴリーを定義し、その仕組み作りに取り組んでいる。「必要な情報を社内で把握し、それを社外へとつなげていかなければ話にならないようになってきている。そのためには社内で何をオープンにし、何をクローズにするのかという戦略的な線引きが必要になる。また、デジタル化やデータ化を社内で進める他、企業間連携のインフラなども必要になる。さらにつながりたくてもつながれない企業にとっての支援も必要だ。これらを全て行って初めてGX(グリーントランスフォーメーション)は進む」と西岡氏は述べている。
IVIの今後の取り組みについては、西岡氏は「ここまでの8年間の取り組みの中で、考え方を示した『スマートシンキング』、アーキテクチャを示した『IVRA』、企業間データ連携を可能とする『CIOF』、企業内データ連携の仕組みである『PLSX』など基本骨格はできてきた。今後はこれらの基本的なツールや手法を生かして、さらに実践的な成果を生み出していく」と語る。
2023年度の新たな取り組みは、未来工場の具体的な実現を想定したPoC(概念実証)企画の開始と、メンバーへのこれらのツールの無償提供、年度ごとの企業間連携用の辞書ツールの無償配布、マッチングイベントの開催などを予定する。さらに、2030年までのロードマップを示し、具体的に未来ビジョンとして描いた「コンビニ工場」「シェアリング工場」「コネクテッド工場」に向けたステップを示した。西岡氏は「これから工場や製造現場がよりホットになる環境が生まれてくると考えている。メタバースと現場の融合した仕組みがこれからの重要なターゲットだ」と語っている。
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