IVIでは、これらの将来像を実現するためのさまざまな仕組みや手法、ツールなども順次用意してきた。その1つがIVRA(Industrial Value Chain Reference Architecture)だ。IVRAは、3次元モデルの1つのブロックを「スマートマニュファクチャリングユニット(SMU)」とし、高さ方向を「アセット(資産)軸」、横方向を「アクティビティ軸」、奥行き方向を「マネジメント軸」とする。この軸に合わせてSMUを並べて、組織のどの階層のどの視点での活動なのかの位置付けなどを明確化する。
具体的に、アセット軸は、作業員レベル、プロセスレベル、製品レベル、プラントレベルの4つの段階に分類している。「アクティビティ軸」は、Plan、Do、Check、ActionというPDCAサイクルでの分類を行っている。「マネジメント軸」は、クオリティー(Q)、コスト(C)、デリバリー(D)、環境(E)というQCDE活動で示される分類を行う。これらの分類を活用し、具体的なモデル作成の指針とするのだ。西岡氏は「IVRAは国際標準化しており、日本独自の視点を盛り込んだ点でも評価を受けている」と述べている。
また、IVRAによるデータサイクルなども定義している。西岡氏は「こうしたデータサイクルはIVIの前身でもある日本機械学会 生産システム部門の中でも考えられてきた。そして当初からコネクテッド工場を実現するためにはMES(製造実行システム)連携がカギを握るというビジョンを持っていた」と語る。
こうした生産プロセスの体系化が進むことで「プロセスファーストという考え方も可能となる」(西岡氏)。「現在の製造業は製品を軸にさまざまな物事が決まるが、この発想を逆転させ、製品を工場の生産プロセスで生み出される従属品だという位置付けで捉えると、強いプロセスを組み上げることが強い製品を生み出し続けることができるカギとなる。製品ライフサイクルと工場プロセスライフサイクルを同時に考え、これをデジタル化して仕組み化していくアプローチもある。このプロセスベースでの考え方は工場の製造技術や手法などに強みがある日本でしかできないことだ」と西岡氏は訴えている。
これらの取り組みは工場の中だけでは実現できない。企業内や企業間、産官学などさまざまな他社や他機関との連携で実現できることだ。IVIではこうした変革を、DX(デジタルトランスフォーメーション)になぞらえ、モノづくりを変革する「monoX」として位置付ける。そして、これらを実現するために必要な5つのカテゴリーとして「製品の品質と設計」「設備とプロセス技術」「現場カイゼンとAI」「データとアジャイル」「企業間の新たな結合」を挙げ、課題解決に取り組んでいく方針を示している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.