これにより、ISO規格の寿命計算方法のパラメータである基本動定格荷重をより最適な値にすることできるようになった。
日本精工 技術開発本部 コア技術研究開発センター 第一研究開発室 GMの小俣弘樹氏は「従来の計算式から出される寿命と実際の寿命は数倍から数十倍の差が生じていたが、新しい計算式を適用することで±10%程度まで精度が向上した」と話す。例えば、従来の計算式から算出された定格疲れ寿命が10時間とすると、実際に回転試験を行うと100時間、200時間使うことができるくらいの幅が存在したという。その差が±10%程度まで縮んだということで、ラジアルころ軸受なら寿命が2倍相当に向上することになる。
定格疲れ寿命が正確に分かることで、より適切なサイズの軸受の選択につながり、機械の小型化が可能になる他、メンテナンス頻度も低減する。
まずは、長寿命の軸受が求められる国内のインフラ設備向けなどの新規採用案件に提案する。標準の転がり軸受には数年以内に適用を予定している。日本精工 産業機械事業本部 産業機械技術総合開発センター 産業機械軸受技術センター 産機軸受開発室 GMの河田真一氏は「新しい考え方を用いており、まずは特定のユーザーに提案し、ご理解をいただいた上で適用していただき、さまざまなご意見をくみ取っていきたい」と語る。
この技術の開発には、日本精工独自の開発手法であるリアルデジタルツインが大きな役割を果たした。現象の内部を詳細に観察し、そのからくりの推理、モデル化などを通じて新たなソリューションの発想を図るのがリアルデジタルツインだが、小俣氏は「これまでは実験的、経験的アプローチだったが、デジタル技術を取り入れたことで、何μmの非金属介在物があったら、寿命が何時間になるということが、はっきり分かるようになった。実験ベースでやっていたら10年、20年かかっていたような研究が、非常に短時間で達成できた」と述べる。
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