日本精工(NSK)は世界初となる100%植物由来のバイオマスプラスチックを用いたボールねじ用保持ピースを開発した。
日本精工(NSK)は2023年3月17日、世界初となる100%植物由来のバイオマスプラスチックを用いたボールねじ用保持ピースを開発したことを発表した。
ボールねじは高い効率を生かした転がり要素部品として、さまざまな産業機械で使用されている。特に、射出成型機やサーボプレス機は使用電力削減のため、従来の油圧式からサーボモータとボールねじを使った電動式に駆動方式が切り替わっている。
保持ピースはボールねじ内部でボールとボールの間にあり、公転速度の違いからボール同士が密になることで起こる競り合いによる損傷を防ぎ、ボールねじの耐久性を向上させる重要な部品だ。大型で高荷重のボールねじに使い、1つのボールねじで数十〜数百個の保持ピースがある。
日本精工では今回、これまで保持ピースの材料に活用してきたエンジニアリングプラスチックに代わり、DSMエンジニアリングマテリアルズの高性能ポリアミド「EcoPaXX B-MB PA410」を採用したバイオマスプラスチック保持ピース「NSK S1」を開発した。
EcoPaXX B-MB PA410は主にトウゴマなどの100%植物由来であり、植物は成長時にCO2を吸収するため、焼却時の排出量は相殺される形で実質0になる。バイオマスプラスチック保持ピースNSK S1は従来材と比較してライフサイクル全体でCO2排出量を9割削減することに加え、性能も従来材と同等以上を持つという。
「保持ピース自体は、ボールねじの部品の1つにすぎないため、1つのボールねじ全体に占めるCO2削減効果は1%程度だが、仮に日本精工が生産しているボールねじの保持ピースをバイオマスプラスチック保持ピース置き換えた場合、年間20トンのCO2を削減できる見込みだ」(産業機械事業本部 産業機械技術総合開発センター 直動技術センター BS技術部 副主務のチハリガ氏)
開発に当たっては、日本精工独自の開発手法であるリアルデジタルツインを活用した。リアルデジタルツインは、現象の内部を詳細に観察し、そのからくりの推理、モデル化などを通じて新たなソリューションを発想する日本精工独自の開発手法だ。デジタル解析で部品の特性、閾値を正確に予測し、実際の実験で評価と検証を行うことで、開発期間を約1年という従来の2分の1に短縮した。
新しい保持ピースは軸径50〜200mmのNSK S1入りボールねじに適用する。日本精工ではこの保持ピースを適用したボールねじ製品の売上高として2026年までに10億円を目指す。価格については「材料費自体は従来材より大幅にアップするが、ボールねじの単価に占める割合はわずか数%であり、生産性の向上などによって材料費の上昇を吸収することで、従来材とほぼ同等の価格で提供する考えだ」(日本精工 産業機械事業本部 プレシジョン本部 プレシジョンマーケティング部 部長の桜井浩司氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.