日本精工は2022年2月24日、ロボット領域における新たな価値創出につながる技術として滑らかな全方向移動を実現する「アクティブキャスタ」と高精度な衝突検出を可能とする「協働ロボット用アクチュエータ」を開発したと発表した。両技術ともに、2022年3月9〜12日に東京ビッグサイトで開催される「2022 国際ロボット展(iREX2022)」での出展を皮切りにユーザーニーズを探り、製品化への検討を進める方針だ。
日本精工(以下、NSK)は2022年2月24日、ロボット領域における新たな価値創出につながる技術として滑らかな全方向移動を実現する「アクティブキャスタ」と高精度な衝突検出を可能とする「協働ロボット用アクチュエータ」を開発したと発表した。両技術ともに、2022年3月9〜12日に東京ビッグサイトで開催される「2022 国際ロボット展(iREX2022)」での出展を皮切りにユーザーニーズを探り、製品化への検討を進める方針だ。
移動するサービスロボットの利用の拡大が期待される中、NSKでは人間と同様に全方向へ移動できることが求められていると想定。東京理科大学 和田研究室と共同で全方向に滑らかな移動ができるアクティブキャスタの開発を行った。
アクティブキャスタはサービスロボットやロボット台車の台車部分に使用する技術だ。減速機を車輪の両脇に設ける独自の差動機構を採用。これにより2つの車輪の両脇の2つの減速機が逆方向に回転することで、一定方向への車輪の駆動を実現している。逆にこれらの2つの減速機のどちらかの回転スピードを落とすと車輪がその差分だけ曲がることになり、駆動と操舵を一体機構で行える点が特徴だ。
一般的に車輪駆動と操舵旋回のために別々の機構を搭載した場合、車輪駆動に大きな負荷がかかるために大型のモーターを採用する必要がある。ただ、アクティブキャスタでは独自機構を採用したことにより、2つの小さいモーターを採用できるようになる。「例えば、操舵独立型の車輪駆動の場合は、操舵で100W、駆動で300Wのモーターが必要になるとしたら、アクティブキャスタでは150Wのモーター2個で実現できる。トータルとしてコンパクト化が可能となる」とNSK 新領域商品開発センター グループマネジャーの尾崎学士氏は語る。
一方、全方向移動が可能な駆動方式としてはフリーローラー式(メカナムホイール方式)などもあるが、こちらは車輪に凹凸があり、走行時に上下方向の振動が発生するために滑らかな動きが難しく、また移動音が大きくなる。アクティブキャスタでは通常の車輪を使うために滑らかで静かな移動が可能だ。
さらに、人が押した力を検知する外力検出機能がキャスタに内蔵されており、重量物を運ぶ台車や、病院内でのベッドなどで採用された場合、運搬の際に持つ場所が限定されず全方向にアシスト機能を作動することも可能となる。
開発の苦労について尾崎氏は「アクティブキャスタは部品点数が増えるためにコンパクトに抑えるための設計が難しい面があった」と述べている。今後は展示会などを通じ、ロボットメーカーやユーザー企業へのニーズの検証を進める。これらを確認後に本格的な製品化開発を進めていく計画だ。「実際の販売の時期や価格についてはまだ決まっていない。これらが確認できた後にあらためて計画する」(尾崎氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.