量子ゲート方式の量子コンピュータは、現行のコンピュータと比較していくつかの領域で飛躍的に計算速度が向上すると見込まれており、さまざまな課題への適用が期待されている。しかしながら、量子コンピュータが真の性能を発揮するためには、複数の物理量子ビットから1つの論理量子ビットを形成し、量子ビットに冗長性を持たせることで、発生した量子エラーを訂正しながら計算する量子エラー訂正技術の高度化が鍵となる。
大阪大学量子情報・量子生命研究センサー 副センター長の藤井啓祐氏は、「量子エラー訂正技術のFTQCでは現在、CNOT、H、S、Tという4つの基本量子ゲートそれぞれで量子エラーを訂正し、それらの基本量子ゲートを組み合わせることで、あらゆる量子計算を量子エラーの影響なく実行可能とする方針のアーキテクチャが主流となっている」と説いた。
加えて、「しかし、量子コンピュータならではの計算を行うTゲートの量子エラー訂正には非常に多くの物理量子ビットが必要な他、量子計算に含まれる状態ベクトルの向きを回転させる操作には、論理Tゲート操作を平均して50回程度繰り返す必要がある。これに対応するためには、100万以上の物理量子ビットを備え、FTQCが可能な本格的な量子コンピュータが不可欠で、その実現には相当な年月が掛かることが予想されている」と指摘した。
そこで、大阪大学と富士通は、大阪大学の「量子情報・量子生命研究センター(Center for Quantum Information and Quantum Biology)」内に2021年10月1日に設置した「富士通量子コンピューティング共同研究部門」で、富士通が推進する「富士通スモールリサーチラボ」の一環として量子エラー訂正技術の研究開発に取り組み、新たな量子計算アーキテクチャの確立に至った。
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