サステナブルなモノづくりの実現

「燃やした臭いで判定」を無くす、樹脂の種類を瞬時に特定するハンディセンサー材料技術

リコーは「第2回脱炭素経営工場EXPO」で、樹脂判別ハンディセンサー「RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150」などを展示している。

» 2023年03月17日 10時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 リコーは「第2回脱炭素経営工場EXPO」(2023年3月15〜17日、東京ビッグサイト)で、樹脂判別ハンディセンサー「RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150」などを展示している。

廃プラの一括廃棄を防止

 RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150は樹脂を測定部に当ててボタンを押すと、材質を瞬時に自動判定するセンサー機器である。サイズは50×154×76mmで重量は285gと、片手で保持しやすい小型軽量サイズで、取り回ししやすい点が特徴だ。判定結果はBluetooth経由でスマートフォンの専用アプリケーション(Android対応)に送信され、すぐに確認できる。

RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150の外観(右)と専用アプリケーション使用のイメージ(左)[クリックして拡大]

 判定できる樹脂の種類は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ABS合成樹脂、ポリカーボネイト、ポリアミド、アクリル、グリコール変性PET、ポリアセタール、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレートの13種類である。複合プラスチックの混合比率を最大3種まで測定する機能も搭載する。判定可能な樹脂の種類は、ユーザーの意見を踏まえつつ、システムのアップデートを通じて追加していく計画もあるという。

 測定技術の仕様上、一部の黒色素材などは判定が難しい場合がある。透明な素材は有色の紙を当てつつ測定することで、材質を正確に判定できる。

 ソフトウェアのアップデートを通じて、機器の判定用アルゴリズムの更新や不具合の修正などを行う。また、現状ではアプリケーションは個別にスマートフォンに導入する仕組みだが、将来的にはクラウド化も計画しており、digglueが提供する資源循環DX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームの「Matere」との連携なども視野に入れる。

アプリケーションの画面[クリックして拡大]

 利用シーンとしては自社工場から出る廃材や端材の種類を判別して、廃棄すべき素材を選別するといったものがある。これによって一括廃棄を防ぐとともに、一部を有価取引に回せるようにする。また、仕入れた製品の梱包材や緩衝材などの材質を素早く判定して、効率的な処理につなげることもできる。輸入製品の品質検査を外部に委託していた企業は、これを自社で行える体制づくりにも使える。

 製造業だけでなく、廃棄された樹脂を買い取る業者からのニーズも高い。リコーの担当者によると、従来、こうした業者では「熟練の担当者が実際に検査対象物をライターで炙り、煙のにおいなどを嗅いで樹脂の種類を判別することがあった」という。当然、健康被害が生じやすいため、新人教育などで同様の手法を伝えていくことは難しい。こうした状況の改善にも役立つと考えられる。

 RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150は2023年3月10日に発売されており、価格は税別で89万8000円。

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