オムロンは2023年3月8日、ESG(Environment、Social、Governance)についての説明会を開催。社会価値と経済価値をそれぞれ高め、カーボンニュートラルの実現やデジタル化社会の実現、健康寿命の延伸などの社会課題解決を進めていく方針を示した。
オムロンは2023年3月8日、ESG(Environment、Social、Governance)についての説明会を開催。社会価値と経済価値をそれぞれ高め、カーボンニュートラルの実現やデジタル化社会の実現、健康寿命の延伸などの社会課題解決に向けた取り組みについて説明した他、人的創造性などの働く環境を重視した経営の方向性について紹介した。本稿ではその中で主に「環境(Environment)」についての取り組みを中心にお伝えする。
オムロンは、創業者の立石一真氏が示した社憲「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」の下、社会価値につながる企業理念と、経済価値を両立させる取り組みを進めている。オムロン 代表取締役社長 CEOの山田義仁氏は「創業者が社憲に込めた思いは『事業を通じて社会の発展の貢献する』という公器性と『自らが社会を変える先駆けとなる』という決意の両方を示している。その中で“稼ぐ力”の強化と“企業理念の浸透”の2つに取り組んできた」と述べる。
2011年に代表取締役社長に就任した山田氏は2023年3月末で社長を退任する予定だが、2015年に企業理念を改訂しそれを2022年に定款に盛り込むなど、企業理念を中心とした経営を進めてきた。「いかに現場に企業理念を浸透させ、共鳴を呼び起こすことができるかに力を注いできた」と山田氏は語る。2022年3月には、2030年をターゲットとした長期ビジョン「Shaping the Future 2030」を発表し、「社会価値」と「経済価値」の両方を創出し企業価値の最大化を目指すことを示している。そして、10年間でオムロンが取り組む社会的課題として「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」の3つを位置付けている。
「カーボンニュートラルの実現」では「顧客や社会に対する自社商品/サービスの提供を通じたカーボンニュートラルの推進」と「自社拠点におけるカーボンニュートラルの推進」という2つのアプローチで取り組む。
カーボンニュートラルを含めた環境への対応は、経済価値とトレードオフの関係となることも多いが、オムロンではあくまでも社会価値と経済価値の両立を目指す方針だ。そのため、エネルギー生産性を指標とする国際イニシアチブ「EP100」への加盟を2022年11月に発表。生産性や品質を高め企業としての競争力を高める一方で、エネルギー消費を下げることで、エネルギー当たりの付加価値を2倍に増やすことを目指す。こうした取り組みをバリューチェーン全体に広げることで価値を高めていく考えだ。
その事例の1つとして、村田製作所とのエネルギー生産性向上に向けた共創について紹介した。村田製作所では、オムロン 綾部工場で取り組むエネルギー情報の常時見える化や、データ分析、アプリの活用実績などを自社工場に導入。まず国内拠点において、エネルギー削減のポテンシャルを算出し、今後、両社で協力して生産現場の省エネ化を進めていく計画を示している。
オムロン 執行役員 グローバルインベスター&ブランドコミュニケーション本部長 兼 サステナビリティ推進担当の井垣勉氏は「オムロンがエネルギー生産性向上でパートナーとして選ばれる強みの1つは、綾部工場で電力見える化などを10年以上もやってきた実績があることだ。村田製作所との共創も綾部工場での取り組みをそのまま提案したものだ」と強調する。
さらに、2つ目の強みとして、2016年から推進してきた戦略コンセプト「i-Automation!」におけるアプリ開発を挙げる。「オムロンではi-Automation!の下、課題解決につながるソリューション提案を進めてきた。現在開発済みのアプリが250以上あり、その中で電力使用状況に応じてスイッチを入れたり切ったりするものなど、エネルギー生産性向上につながるアプリで現場で使えるものが用意できている。こうした技術やノウハウ、ソリューションをパッケージで提供できるのが強みだ」と井垣氏は述べている。
「自社拠点におけるカーボンニュートラルの推進」については、2050年までに温室効果ガス排出量をゼロにすることを目指し、2024年度(2025年3月期)には基準年(2016年度)比53%削減、2030年度に65%削減を目標として設定している。また、2024年度までに国内の全76拠点の使用エネルギーを再生可能エネルギーに全て切り替え、カーボンゼロ化を目指す。
2022年度については、こうした中期目標を前倒しで達成。温室効果ガス排出量は2022年度までに基準年の51%削減を目標としていたが、58%まで削減できる見込みだという。加えて、国内拠点のカーボンゼロ化についても目標9拠点だったのに対し、10拠点で達成できる見込みだとしている。
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