製造業においても大きな課題となってきているカーボンニュートラル。その中で、オムロンは2022年11月8日、エネルギー効率に関する国際イニシアチブ「EP100」への加盟を発表した。なぜEP100の加盟に至り、その先をどのように見据えているのか、オムロン 執行役員常務 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長の辻永順太氏に話を聞いた。
製造業においても大きな課題となってきているカーボンニュートラル。その中で、オムロンは2022年11月8日、エネルギー効率に関する国際イニシアチブ「EP100」への加盟を発表した。EP100は事業のエネルギー効率を倍増させることを目標に掲げる各国の企業が参加しており、オムロンは日本企業では4社目、製造業においては日本初となる。
加盟に当たってオムロンは制御機器事業とヘルスケア事業において、エネルギー生産性の倍増を目指し、2040年までに1GWh当たりの売上高比率を2016年比で200%にすることを目標として掲げている。
なぜEP100の加盟に至り、その先をどのように見据えているのか、オムロン 執行役員常務 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長の辻永順太氏に話を聞いた。
MONOist まずカーボンニュートラルに向けたオムロンの取り組みを教えてください
辻永氏 オムロンは2022年4月に長期ビジョン「Shaping the Future 2030(SF2030)」をスタートさせた。その中で、われわれが取り組む3つの大きな社会的課題の1つに、カーボンニュートラルの実現がある。
具体的には、自社から排出される温室効果ガスを2016年度比で2024年度に53%、2030年度に65%削減することを目指している。2024年までの中期経営計画では、国内76拠点のカーボンゼロの実現とグローバルでの省エネルギー、創エネルギーの拡大に取り組んでいる。既に5拠点の再生エネルギー電力調達が完了しており、今後も順次増やしていく。
自社の取り組みだけではなく、カーボンニュートラルの実現に向けてわれわれのソリューションを社会に提供することでも貢献していく。
MONOist なぜEP100への加盟に至ったのでしょうか
辻永氏 われわれにできる社会への貢献という観点から、EP100がふさわしいと考えた。
同じような国際イニシアチブとして「RE100」もあるが、これは企業の再生可能エネルギー100%利用を目指すもので、使用量としては変わらない。「EV100」は輸送手段の100%のEV(電気自動車)化を進めるものだ。
EP100はエネルギー生産性の分母となる単純なエネルギー消費の削減だけでなく、分子として製造業では永遠の経営課題ともいえる生産性向上が求められる。生産量は同じままエネルギー削減をしても、モノづくり現場の使命は果たせない。RE100とEV100の考えも大切だが、生産性の向上と消費エネルギー削減という2つの使命を果たすためには、EP100の考え方がマッチした。
われわれの綾部工場(京都府綾部市)では既に、2010年からの11年間で生産ラインの消費電力を15%削減しながら、工場出荷金額を35%向上させ、エネルギー生産性を1.6倍にしている。ヘルスケア事業の生産拠点である松阪事業所(三重県松阪市)でも同様の取り組みを進めていく。
綾部工場でも同じ製品を作り続けてきたわけではない。新商品が出て新しい設備が投入されれば、分母となる消費エネルギーが上がる。そこにエネルギー生産性向上の考え方を取り入れて消費エネルギーを下げながら、分子はわれわれのコンセプトである「i-Automation」のもと「ILOR+S」(センサーなど入力機器の「Input」、コントローラーなど制御機器の「Logic」、モーション/ドライブなど出力機器の「Output」、産業用ロボットの「Robot」、安全機器の「Safety」)の技術を使ったアプリケーションで生産性と品質を上げることで、分母と分子が相まって1.6倍という数字につながった。
自社工場での実績も含めてソリューションを数多く保有しており、目標とする2040年までのスパンを考えてもエネルギー生産性を2倍にする試算ができている。多くの経営者と話をしても、モノづくり現場が求めているのはまさしくこの点だと感じる。このソリューションを世の中に展開していくことが、製造業および社会への貢献につながると考え、宣言するに至った。
もちろん、2040年までに1GWh当たりの売上高比率を2016年比で200%という目標達成は容易ではなく、欧米の大手製造業でもEP100の加盟を検討しながら断念した企業があると聞いている。そういった企業とも一緒に、取り組みを加速させていくことができればと考えている。
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