これらの改善活動に加え、新機種でチャレンジした点がもう一つあるという。それはキー形状だ。従来の電卓や関数電卓のキーの形状は、一部を除きほとんどが四角キーだが、新機種では丸キーを全面採用している。
その理由について、江口氏は「デザイン部門から形状提案があり、それを設計した。関数電卓のメインユーザーである学生の皆さんに、より親しみやすい機種にしたかったからだ。ゲーム機のコントローラーのボタンから着想を得て丸キーを採用することにした。ゲームのように楽しみながら関数電卓を使ってもらいたいという意図が込められている。従来機種でも部分的に丸キーを用いていたこともあるが、全面的に丸キーを採用したのは初めての試みだ」と説明する。
丸キーは親しみやすさだけでなく、四角キーと比較してどの方向からでも押しやすいといった特長も備える他、全面的に丸キーを採用したことで、最上部のキーから最下部のキーまでの距離(キーエリア)が88.5mmと従来機種比で2mm拡大し、操作性の改善に寄与している。
さらに、筐体そのものもサイズダウンしており、バッテリータイプで比較すると、従来機種が165.5×77×13.8mmなのに対して、新機種は161.7×77×13.8mm。2wayタイプで比較すると、従来機種が165.5×77×11.1mmなのに対して、新機種は161.7×77×10.7mmと小型化を果たした。
カシオでは、関数電卓の設計は基本的に1人で担当することになっており、若手設計者にとって多くの経験と学びを得る絶好の機会にもなっているという。
江口氏は「私も今回初めて関数電卓の新機種の設計を任されたが、結城さんだけでなく、他の先輩方からもアドバイスをもらいながら、インナープレートの樹脂化をはじめ、いくつか新しいことに挑戦できた。次はさらなるコスト削減につなげるなど、設計者CAEの活用の幅を広げていきたい。また、丸キーの押し心地などをデジタル技術で定量的に評価する手法の確立に向けて、CAE技術開発グループの協力を仰ぎながら取り組めたらと思う」と展望を語る。
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