デジタルツインを実現するCAEの真価

カシオが設計者CAEによるフロントローディングで関数電卓の従来課題を解消CAE最前線(2/4 ページ)

» 2023年03月08日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

トポロジー最適化を活用し、形状の最適化を実施

 インナープレートの樹脂化に向けては、トポロジー最適化(位相最適化)を用いて樹脂製インナープレートの最適な形状を導き出した。

 具体的には「まず、落下解析を実施し、液晶部の変形条件を確認して3パターンの変形を捉え、これら3つの変形が最小になるようにトポロジー最適化で肉抜きを行った。そこで得られた結果から着想を得て、リブ形状を施したインナープレートを設計し、再度落下解析を実施した。落下解析の結果(液晶部の発生応力)が目標値以内に収まるまで形状の微調整と解析を繰り返した」(結城氏)。

インナープレートの樹脂化に向けた設計アプローチについて インナープレートの樹脂化に向けた設計アプローチについて(※取材内容を基にMONOist編集部が作成)[クリックで拡大]
落下解析のイメージ 落下解析のイメージ[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

 従来のアプローチでは、実際に樹脂製インナープレートを試作して、実験によって検証する必要があったが、トライ&エラーの作業をコンピュータ上(バーチャル)で繰り返し行えたことで非常に精度の高い設計が可能となり、ほぼ手戻りなしで金型製作まで進めることができたという。結城氏は「実際、出来上がった樹脂製インナープレートを組み込んだ実機試験で、液晶部の割れは発生しなかった」と振り返る。

完成した樹脂製インナープレートの実物 完成した樹脂製インナープレートの実物[クリックで拡大]

 こうして開発した樹脂製インナープレートは2022年発売の「ClassWiz」シリーズの新機種(FX-991CW、FX-82NLなど)に搭載されることとなった。

FX-991CWFX-82NL 背面筐体を外した状態の新機種「FX-991CW」(左)と「FX-82NL」(右)。インナープレートの樹脂化により4つの効果(詳細は次ページ)が得られたという[クリックで拡大]
樹脂製インナープレートを採用した新機種「FX-991CW」。左は背面筐体を外した状態 樹脂製インナープレートを採用した新機種「FX-991CW」。左は背面筐体を外した状態[クリックで拡大]
バッテリータイプの変遷2wayタイプの変遷 カシオは設計者CAEによるフロントローディングの実践によって長年の課題であったインナープレートの樹脂化に成功した。写真はバッテリータイプ(左)と2Wayタイプ(右)の変遷(背面筐体を外した状態)。いずれも手前が新機種、中央が1世代前の機種、奥が2世代前の機種となる

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