パナソニック くらしアプライアンス社は、大阪公立大学 大学院獣医学研究科 准教授の安木真世氏との共同研究で、ナノイーの曝露による新型コロナウイルスの不活化が、ウイルスの構造崩壊につながる一因だと確認した。
パナソニック くらしアプライアンス社は2023年2月22日、東京都内で会見を開き、大阪公立大学 大学院獣医学研究科 准教授の安木真世氏との共同研究で、ナノイー(帯電微粒子水)の曝露(ばくろ)による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化メカニズムにおいて、ウイルスの構造崩壊が起こっていることを確認したと発表した。
同社と安木氏は、ナノイーで生じる新型コロナウイルスの不活化メカニズムに焦点を当て、ナノイーの曝露有無による新型コロナウイルスの構成成分ごとの影響、細胞へのウイルスの結合量を測った。その結果、新型コロナウイルスを構築する脂質二重膜やタンパク質、ゲノムRNAにナノイーが多段階で作用する様子を確かめた。
ナノイーを曝露した新型コロナウイルスでは、細胞への結合能力が失われることで感染が抑制されることも示唆され、ナノイーによる新型コロナウイルスの不活化メカニズムの一部が明らかになった。なお、今回の検証は密閉された試験空間での結果であり、実使用空間における効果を検証したものではないという。
安木氏は、「ナノイーは、新型コロナウイルスの表面に接触し、人体の細胞への侵入に必要な新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を分解する他、エンベロープに損傷を与える。新型コロナウイルス表面に存在するスパイクタンパク質の分解やエンベロープの損傷は進行し、新型コロナウイルスのひずみは拡大する」と説明した。
続けて、「これにより、エンベロープは崩壊し、ヌクレオカプシドタンパク質を含む新型コロナウイルスの内部タンパク質とウイルスの増殖に必要なゲノムRNAの分解が発生し、新型コロナウイルスがバラバラになり、人体の受容体に結合できず感染しないことが分かった。これら一連の現象が、ナノイーによる新型コロナウイルス不活化メカニズムの一部と考えている。さらに、新型コロナウイルスの変異株や他のエンベロープウイルスへの適用も期待される」と話す。
ナノイーは、空気中の水に高電圧を加えることで生成されるナノサイズの帯電粒子水で、肌と髪に優しく、臭い、菌、ウイルス、アレル物質の抑制に作用する。パナソニック くらしアプライアンス社の空気清浄機などに搭載されたナノイー発生装置では、霧化電極をペルチェ素子で冷却し、空気中の水分を結露させて水をつくり、霧化電極と向き合う対向電極の間に高電圧を印加することで、OH(水酸化物イオン)ラジカルを含んだ約5〜20nmサイズのナノイーが生じる。
パナソニック くらしアプライアンス社 副社長 技術担当の宮下充弘氏は、「当社は、ナノイー技術について、2020年7月に新型コロナウイルスに対する抑制効果を、2021年11月には新型コロナウイルス変異株4種に対する抑制効果を、2022年3月には約6畳(24m3)の試験空間における新型コロナウイルスに対する抑制効果を実証した。また、ナノイーを曝露した新型コロナウイルスをVero細胞(ウイルス研究やワクチン生産の細胞基材として広く利用されている)に接種しても細胞死が起こらないことが明らかになっており、感染が起こらないことが示唆されている。しかし、これまでは、ナノイーが新型コロナウイルスにどのように作用して不活化しているのか分からなかった。そこで、今回の研究を行った」とコメントした。
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