タイヤ耐久性能を決めるゴム破壊メカニズム解明研究開発の最前線

住友ゴム工業は、ドレスデン工科大学 教授のガート・ヘインリッチ氏との共同研究により、タイヤの耐久性能を決定する重要な要因であるゴムの破壊メカニズムを解明した。

» 2025年03月24日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 住友ゴム工業(以下、住友ゴム)は2025年3月19日、ドレスデン工科大学(ドイツザクセン州)教授のGert Heinrich(ガート・ヘインリッチ)氏との共同研究により、タイヤの耐久性能を決定する重要な要因であるゴムの破壊メカニズムを解明したと発表した。この研究成果は、同年3月6〜7日に米国フロリダ州オーランドで開催された米国化学会(American Chemical Society)の招待講演で発表された。

住友ゴム 次世代材料研究部長 多田俊生氏の発表の様子(左)と、多田部長およびGert Heinrich氏(右) 住友ゴム 次世代材料研究部長 多田俊生氏の発表の様子(左)と、多田部長およびGert Heinrich氏(右)[クリックで拡大] 出所:住友ゴム

ボイドの発生によりき裂先端に集中する応力が低減することが判明

 住友ゴムはヘインリッチ氏が所属するライプニッツ高分子研究所(Leibniz Institute of Polymer Research Dresden)との共同研究により、タイヤの耐久性能を決める重要な要素であるゴムの破壊メカニズムを解明した。

 ゴム材料に生じる割れ目や裂け目が進行する「き裂現象」は、タイヤの耐久性能を決定する重要な要因だ。これまでは引き裂き試験などでゴムの耐久性を評価していたが、き裂先端のミクロスケールでの構造変化については不明点が多くあった。今回の研究ではシミュレーション技術を駆使してゴムのき裂先端にかかる力を解析し、き裂を決定する要因を明らかにした。

 ゴムのき裂先端では膨張変形を受け、ボイド(物体に含まれる微小な空洞)が発生する。ボイドは成長して合一することで、き裂をさらに悪化させる。一方で、ボイドの発生により、き裂先端に集中する応力が低減することも判明した。

ゴム材料の「き裂現象」発生メカニズム ゴム材料の「き裂現象」発生メカニズム[クリックで拡大] 出所:住友ゴム

 同社では引き続きボイドの分散状態を変えた際の力の分布と、き裂特性について研究を継続し、耐摩耗性能に優れた環境負荷の少ないタイヤの開発を進めていく。

 同社は2023年3月に、タイヤ事業における独自のサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を発表した。TOWANOWAはバリューチェーン上の5つのプロセスからなる「サステナブルリング」と各プロセスから収集したビッグデータを連携させる「データリング」で構成されており、2つのリング間でデータを共有/活用することで新たな価値提供を目指す。

 TOWANOWAの「材料開発・調達」プロセスにおいて、今回の共同研究で得られたデータを活用することで、より高機能で高品質なタイヤの開発を推進する。

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