ISTがOur starsで人工衛星の開発を手掛ける狙いの背景としては、米国のSpaceXに代表されるロケットスタートアップが「ロケット×人工衛星」の垂直統合型サービスによってもたらしている変革がある。ロケット×人工衛星のメリットとしては、ロケットに最適化した衛星とのワンストップによる低価格化、衛星コンステレーションの迅速な構築、超低高度などへの特殊軌道への対応などが挙げられる。
Our starsでは、宇宙実験用衛星による無重力実験/回収プラットフォーム、超低高度衛星による地球観測サービスに加え、フォーメーションフライトによる衛星通信サービスを構想している。衛星コンステレーションを用いた通信サービスとしては、SpaceXと連携するStarlinkの他、OneWebなどが知られているが、これらは地上局アンテナが必要になる。Our starsが構想する衛星コンステレーション+フォーメーションフライトでは、衛星とスマートフォンなどの各デバイスが直接通信を行えるので、地上局アンテナが不要になるという。稲川氏は「現行の衛星コンステレーションが『衛星通信2.0』とすれば、フォーメーションフライトは『衛星通信3.0』になる」と述べる。
現在は、技術確立と地上試験を進めている段階で、今後はISTのロケットを用いた宇宙での実証実験に進めたい考えだ。2030年代の打ち上げを目指すDECAでは、衛星コンステレーション+フォーメーションフライトに用いることを想定した、超々小型衛星1000基を組み込んだ51基のキューブ型衛星を搭載する2段目ロケットを分離するイメージが公開されている。
会見の最後に稲川氏は「ロケット、衛星の先にあるのは、地球上での暮らしをより良く変えていくことだ。ISTはそのための宇宙の総合インフラ会社になっていきたい」と述べている。
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